ベルゲンの朝は快晴。今日は1日観光で、まずは自転車で宿を出発します。
宿のすぐ近くには、小ルンゲゴース湖(Lille Lungegårdsvannet)という八角形の湖があります。
ベルゲン中心部の公園内にあるこの湖は、人工湖ではなく自然の湖で、かつては湾とつながっていたそうですが、市街化が進み20世紀半ばには今の姿になったそうで、中央に大きな噴水が設けられています。
湖の周りは芝生と散策路になっていて、西側には広場と公園があります。
美しい花壇の横を通り抜けるサイダー。
そして、路地を抜けて出てきたところはFløibanen(フニクラ)の駅。
フニクラに乗るのかなあ、と思っていたのはサリーナですが、サイダーは横の道を上っていきます。
やっぱりね。。と上り始めるサリーナ。
右に左にと折れ曲がりながら坂を上っていきます。
上り始めは路地に白い板壁の家が並んでいて、なかなか楽しい。
そして、印象的な4階建ての建物のところに出ました。
この建物はSkansens Battalionといって、若者のマーチングバンドのようなものの本部だそうです。建物は元は消防署だったとか。
その建物の前には、ベルゲン中心部から海までを見渡す景色が広がっています。
おお、気持ちいい景色だね〜、とサイダー。
さて、ここまでは上りのほんの始まりに過ぎません。
さらにどんどん坂を上っていきます。
カーブを繰り返しながら上っていくと、ベルゲンの景色がどんどん広がり、海を隔てた対岸までよく見えるようになってきました。
この辺りは高級住宅街なのでしょうか、見晴らしのいいところに邸宅が並んでいます。上るのは大変そうですが。
フニクラの小さな駅舎を通過しました。Fjellveinenという駅です。
そして住宅地を通ったあと、高台に運動場がありました。
その運動場を右手に見ながら、ここからは森の中の遊歩道を上ります。
静かな森の中をわっせわっせと上るサリーナ。
散歩中の人に「押してあげようか?」など言われつつ、何とか上っていきます。
ようやく森が開け、万国旗のたなびく建物も見えてきました。
どうやら、標高320mのフロイエン山の山頂に到着したようです。
「わあ、いい景色だね〜!」と喜ぶサリーナ。
さすがに320mから眺めるベルゲンの街は壮観です。
こちらは八角形の小ルンゲゴース湖で、その少し向こうに我らのホテルがあるはずです。
サイダーの背景には、茶色い屋根のブリッゲンが湾に面して並んでいます。
観光客も多く、絶好の写真撮影スポットになっています。
多くの観光客はフニクラでやってきます。
これはフニクラのフロイエン駅とカフェの建物です。フロイエン山はハイキングコースもあり、子どものアミューズメントセンターもあって、家族連れが楽しんでいました。
ベルゲンの眺望を楽しんだあと、私たちは来た道を下って再び下の駅舎の前にやってきました。下りはあっという間です。
さきほどはあまり人がいなかったのですが、10時を過ぎてフニクラの駅は大勢の観光客で混雑していました。
ここから次に向かったのは港の方面で、まずブリッゲンの前を通ります。
ベルゲンのブリッゲンは、14世紀にハンザ同盟のオフィスが置かれ、ノルウェイの重要な貿易拠点となりました。木造の建物は倉庫、そして商人のオフィス兼住居でした。
ブリッゲンでは火事などもあり、東側手前にある建物は1900年代のものですが、倉庫の雰囲気を残しています。
そして、こちらが木造の倉庫群。1979年に世界遺産に登録されています。
三角屋根とカラフルな壁がかわいい建物が並んでいます。ブリッゲンの見学はあとにして、さらに埠頭を先へ進みます。
ブリッゲンを過ぎるとすぐに道の正面にローゼンクランツ塔が現れます。
この塔は、総督エリック・ローゼンクランツが国王の命により城塞および館として1560年代建造したものですが、もともとは13世紀に建てられた城塞を増改築したものだとか。
入口でこの塔とホーコン王館の共通チケットを購入し、まず塔に入ってみます。
まず入ったのは、1270年代に最初の城塞を建てたマグヌス・ラガボーテル王のチャペル。
ここから細い階段で塔を上っていきます。
「エリック氏の部屋」に入りました。
大きな浮き彫りの彫刻は、ローゼンクランツ夫妻の墓石の複製だそうです。暖炉にはエリック・ローゼンクランツの紋章。
そして、最上階から屋上に出ます。
ここは警備用の通路だったそうで、角にはタマネギ頭の控え処があります。
そこからは、正面南に帆船も着岸する港が一望に見渡せます。
もう少し東には、賑わうブリッゲンとその奥の魚河岸も見ることができます。
ベルゲンの港周辺の景色を堪能したら、塔を下りて次の建物に向かいます。
これがホーコン王堂で、13世紀半ばにホーコン・ホーコンソン王により建造されたといいます。
この建物は、王の邸宅、儀式の場、政治の中心の場などとして使われた後、14世紀後半以降は荒れ果て、長く倉庫として使わていたとか。
大ホールは切妻の壁のゴシック窓を持ち、パーティやコンサートに利用されているそうです。
滑らかな木の手すりと壁が美しい階段で地下に下ってみます。
地下には3つの部屋があり、支柱によってアーチ型天井が支えられています。
長く倉庫とされたこの建物は、1840年頃に王堂であったことが再発見され、1880〜95年に修復事業が行われ、1910〜16年にはインテリアの装飾が行われました。
しかし第二次世界大戦中の1944年、ドイツ軍の船がすぐ近くの港で大爆発する事件があり、この王堂は外壁を残すだけの廃墟になりました。そこから修復工事が行われ、現在の姿になったということです。
見学を終え、城塞の門をくぐるサリーナ。
次はブリッゲンへと向かいます。
ここは世界遺産のブリッゲンです。三角屋根の木造倉庫群の表通りには、さまざまな商店が並び、観光客で賑わっています。
倉庫群の横を通って後ろに回ってみると、裏路地が私たちをブリッゲンの迷路へと導いてくれます。
といっても大勢の観光客と一緒にワイワイとした雰囲気なので、迷宮という感じではありませんでしたが。
裏の公園に自転車を置き、改めて裏路地に入ると、そこには木造の建物の隙間に細い通路が走っています。
それを目の前にしただけで、瞬時にワクワク感が高まります。
木造倉庫はほぼ3階建てで、2階部分にも通路があり、両側の建物をつなぐ橋が設けられています。
ブリッゲンは幾度も火事に見舞われ、特に1702年の大火では大きな被害を受けたそうですが、その後、11世紀に遡る基礎の上に再建されたそうです。
これが2階部分の通路。
通路の壁や天井は素朴で木材そのままというか、何とも力強いです。
そして通路の上を見上げると、荷を吊り上げる滑車と大きな扉の倉庫が見えます。
これで大量の干しタラを吊り上げたのでしょう。
後ろから細い通路を通って再び表通りに出てきました。路地好きなサリーナはとても楽しそう。
別の路地に入ってみましょう。
さらに建物と建物が接近している狭い路地です。
張り出した2階通路の間から細い空が覗いています。
2階通路を支えているのは、スターヴ教会でも見たような曲がった木材です。
そして2階通路を奥まで行けば、小さなクランクの溜まりがあって、屋根が寄せ合う様が美しい。
ブリッゲンの一帯は小さな区画ですが、活気溢れる中世の商業地を感じさせてくれる場所でした。
ブリッゲンの裏には小さな公園があり、狭い路地から緑の空間に入るとほっと一息つくことができます。
ここで置いてあった自転車をピックアップして次のスポットへ。
埠頭を背に向かったのは、港の端にある魚市場です。
ブリッゲンから港の角を曲がればすぐに到着。
ここは魚市場といっても、観光客が多く集まりテントの下でシーフードを中心に食事ができる人気スポットです。
我々も自転車を置いて、昼ご飯の物色開始。
『魚市場』にもいろいろなものがあります。
ここはいちごやブルーベリー、クランベリーなど、ベリー類がたくさん並ぶお店。観光客のお土産用のソーセージなどを売る店もあります。
といっても、やはり多くはシーフードを並べ、奥の席で食べられる『魚市場』的なお店です。
サーモン、タラ、その他魚介類をグリルしたりソテーにしたり、サンドイッチ、サラダ、そして刺身もあります。おお、鯨もありますね。
こちらはちょっと干したり味付けしたりした切り身の魚のお店。
奥には干しタラもぶらさがっています。
そしてこちらはエビ、カニ、貝などのお店。
真っ赤な大きなエビ、カニの大きな足やハサミ、そしてホタテ貝などがずらりと並ぶ。
というわけでいろいろと目移りしましたが、最も魅力的だったのはこの甘エビ。
これをノルウェイ風に、ソテーしてもらうことにしました。
ガラスケースの前でオーダーしたら、奥の席でソテーされた甘エビをいただきます。レモンをかけて、う〜ん、美味!
ところでこの魚市場には、どうやら魚介類好きなスペイン人やアジア人がたくさん訪れるようで、お店のスタッフはスペイン語堪能だったり日本語できたりする人たちが結構いてビックリでした。
ゆっくり昼食を楽しんだら、ホテルに帰る前に港の対岸に行ってみます。
ここには『魚市場』よりちょっと本格的なレストランが並んでいます。
そしてブリッゲンを見渡す対岸に到着。
水際に並ぶカラフルな三角屋根の建物群がかわいい。
ここでベルゲン観光はいったん終了し、ホテルで休憩することにしました。
ホテルに向かう途中で通ったベルゲン美術館。ここには休憩後の夕方、徒歩で訪れました。
正式には「コーデー・ベルゲン美術館」(KODE Kunstmuseene i Bergen)といい、2006年に旧ベルゲン美術館、西ノルウェイ工芸博物館、作曲家のオーレ・ブル、ハラール・セーヴェルー、エドヴァルド・グリーグの各博物館が統合してKODEという名称になったそうです。
その建物の一つ、KODE 3 にはエドヴァルド・ムンクの重要な作品が数多く展示され、年代ごとの変化を感じることもできます。
『浜辺のインゲル』は1889年、26歳のときの作品。浜辺の岩の描き方に後のムンクらしさが現れてきたと言われています。
『メランコリー』として複数の画が描かれていますが、これは1894-96年の作品。
浜辺に悩みや不安が渦巻いているよう。
そして、家並みや女性たちのドレスが明るい色彩で描かれた1903年の『桟橋の上の女性たち』。
美術館のあとは、のんびり湖畔を散歩。湖の向こうには、今朝上ったフロイエン山が見えています。こうして見ると、そんなに高くはないんですね。
さて明日はベルゲンから夕方の飛行機でオスロに向かいます。いよいよノルウェイの旅も終わりが近くなってきました。