今日は夕方の飛行機でベルゲンを離れ、オスロに向かう日です。
朝、昨日は時間がなくて行けなかったハンザ博物館に行ってみようとブリッゲンを訪れました。
ハンザ博物館の開館は9時なので、それまでの間にブリッゲンの路地を歩きます。
昨日は大勢の観光客で混雑していましたが、今朝は時間が早いせいかほとんど人がいません。
床の細い路地に向かい合って、色とりどりの板張りの塀が並びます。静かな路地でポーズするサイダー。
素朴で力強いつくりの通路や壁が、中世の街の姿をイメージさせてくれます。
お店はまだ開店前ですが、ショーケースの中には大勢のトロールが潜んで、こちらを伺っていました。
さて、そろそろ9時。ハンザ博物館の開館時間です。
博物館は1704年の古い三角屋根の木造の建物の南側に、新しい建物を増築してつくられています。増築部分にはチケットオフィスとお土産売り場、そしてカフェや映像コーナーがあります。
ではいよいよ、当時の生活の様子が展示されている1704年の木造の建物へ。
まず1階にはハンザ同盟やブリッゲンに関する解説と展示があります。ぶらさがっているのは本物の干しタラで、魚の干物の匂いが漂っています。
ハンザ同盟は北ドイツのリューベック、ハンブルグ、ブレーメンなどの都市同盟で、ベルゲンには13世紀末からハンザ商人たちの商館が置かれ、商人たちの集まる倉庫兼住居としてブリッゲンが形成されました。
ここで商人たちが扱うのはノルウェイの海産物で、主に北部のロフォーテン諸島でとれる干しタラがベルゲンに集まります。
水揚げされたタラは、棚に干されて干しタラとして運ばれます。
干しタラは貯蔵がきき、当時の冬の大切な動物蛋白源として、ハンザ商人を通じてヨーロッパ各地へ輸出されていったそうです。
写真は1800年代の後半頃でしょうか。干しタラの集積地であったベルゲンの港には船が溢れ、現在「ブリッゲン」として見られる三角屋根の倉庫兼住居がずらりと並んでいました。
この地図に描かれているブリッゲンの建物は1880年当時のものですが、黒は1899-1913年の間に壊され、赤は1955年、オレンジは1958年に焼失し、当時の建物が現在まで残っているのは白の部分のみとのこと。
さて、その木造の倉庫兼住宅がどうなっているかを示したのがこの図です。
商談を行う店、干しタラをつり上げて保管しておく倉庫、商人の事務所や住居があります。
基礎知識を仕入れたあと、実際の部屋で生活の様子を見学していきます。2階に上ると、まず階段すぐの中央には商品のサンプルルーム。
布地などが置かれています。
そして、簡単なキッチンと商人の冬のベッドルーム。建物の中ほどにあるのは、冬の寒さを防ぐためだそう。
ベッドはとても大人が寝られるとは思えない小ささで、しかも戸棚のように扉が閉められるものです。これも寒さを防ぐためとのことですが、閉所恐怖症になりそう。
表通りに面したところには、商人が商談を行う事務所があります。
そして事務所の一角には、ガラスで区切って設けられた執務室があります。
帳簿をつけながら、ときどき窓の外を見て息抜きしていたのでしょうか。
ここはダイニングです。客人や使用人たちが食事をした場所とのこと。火事の危険を回避するため、火を使った調理は行われず食事は冷たいもののみだったそうです。
天井近くに設置されているこれは、干しタラの重さを計る天秤ばかり。
そして、3階に上ると使用人の部屋があります。
ベッドはやはり押し入れのようなスペースの中。2段になっていますが、この小さなベッド1つに2人が就寝していたとのことでオドロキ!
当時の建物の外壁面や一部の室内の壁には、草花の模様が描かれていたそうで、この廊下の壁にも模様が残っています。
ハンザ商人の日常生活を体感したら、次は「ハンザの館」(Schøtstuene)に移動。シャトルバスもありますが、徒歩でも5分くらい。
ここは、ハンザ商人たちの冬の集会所として使ったところだそうです。
こちらは10時オープン。
広いサロンの食堂には暖炉が設けられています。火事の危険のため、温かい食事もままならなかったブリッゲンで唯一、暖炉が許された場所だとか。
もう一つの食堂です。寒い時期にはここに集まってほっとしたことでしょう。こちらは窓が多くて明るい部屋ですね。
さて、購入したチケットはハンザ博物館、ハンザの館と共に、もう1カ所フィッシャリーミュージアムに行ける共通チケットだったのですが、ちょっと遠くて時間もないので博物館はここまでとしました。
ハンザの館のちょうど横に建つのは、聖マリア教会。
1140年に建てられ、ベルゲンでも最も古い建物の一つと言われています。
10時過ぎ、ベルゲン中心部をあとに、空港に向かって南下を開始しました。
しばらくは自転車道を進みます。
路面電車が街を走ります。自転車道と路面電車で、環境にやさしい街ですね。
そんな自転車道を自転車で進みます。
橋を渡ってベルゲンの中心部から離れていきます。
自転車道は幹線のE39に合流してそのまま南下していきますが、幹線は通らない主義のサイダーのこと、坂を上って山側の一般道に入っていきます。
自転車道があるから幹線でもいいんじゃないの、とつぶやきつつ、仕方なく坂道を上るサリーナ。上の住宅地からときどき見晴らしが開けます。
そして、下りる道が見当たらず、ダートの下りに遭遇するのでした。
素直に自転車道を行けばよかったのにね、とつぶやくサリーナ。
自転車道に戻り、水辺が見えてきました。
入り組んだ湖(海)の一つにたどり着いたようです。
しばらく進むと、ガムレハウゲン(Gamlehaugen)のお城が見えてきました。
お城のようですが住宅で、夏の間は定時のツアーとしてミュージアムを訪れることができるそうです。やや時間が押しているため、次の目的地へ向かいます。
森を抜けるいい感じの自転車道が続いています。ここは岩場の切り通し。
ときどき右に左にと、湖も姿を現します。
そして、森や湖をつないで快適な自転車道は続く。
自転車道のサインは、ここが3つの自転車ルートになっており、ベルゲン空港まで11kmだと示しています。
すいすい走っていたら行き過ぎちゃった。ここで自転車道からちょっと離れて寄り道を。
湖に向かってしばらく走ると、グリーグ博物館のトロルハウゲンに到着です。
トロルハウゲンはエドヴァルド・グリーグが妻のニーナと夏の間過ごした家で、1928年よりグリーグ博物館となっています。
敷地内には、水辺にある作曲のための小屋、そして自然の中に埋もれるように建てられた新しいコンサートホールがあります。
まず私たちは、グリーグ夫妻も散策したであろう森の中の小道を湖へ向かいました。
視界が開けると湖が広がり、岩場が細くつながっていました。
岩場の中程でポーズするサリーナ。
このいい雰囲気の水辺で、まずは腹ごしらえ。持ってきたサンドイッチをいただきます。
ランチを終えたら、森の小道を戻ってグリーグ博物館となっているトロルハウゲンへ。
この夏の別荘は1885年の建築で、グリーグ夫妻が22回の夏を過ごしたところです。
室内は、グリーグ夫妻が使用した家具や装飾品などが置かれ、彼の持ち物や楽譜なども展示されています。
そして、グリーグが1892年より愛用したスタインウェイのピアノもあります。
壁やテーブルの上を飾るのは、さまざまな写真。胸像と双子のように並ぶグリーグには、思わず笑みがこぼれます。
家族や自身の写真だけでなく、バッハやモーツァルト、そして同時代のワグナーなど、たくさんの作曲家の写真も、ブロマイドのように飾られていました。
別荘から湖へと下りていくと、赤い壁の小さな小屋がありました。
作曲に集中するための静寂を求めたグリーグが1891年に建てたものです。
中を覗いてみると、ピアノと書き物机、そしてロッキングチェアに簡易ベッド。
作曲家が狭い空間の中で没頭している姿が目に浮かびます。
13時になりました。ランチコンサートの始まりです。200人収容のコンサートホール、Troldsalenは外からは自然に埋もれるようにつくられ、中からはステージの先に緑に囲まれた湖が望めます。
そんな美しいホールで、グリーグ作曲の小品を選んだピアノコンサートを楽しみました。
さて、コンサートも終わり、トロルハウゲンをあとに一路空港へとスタート。
しばらくは、森の中の自転車道を進んでいきます。
そして、路面電車の脇を通る道に入り、
幹線道路の上の道を走っていきます。
そして自転車道は、幹線道路と並行して住宅地や林の中をと続きます。
ぶつかった幹線道路のR546を渡り、一般道のGrimseidvegenに入りました。
最初はスタジアムの横を通り、学校帰りの子どもたちも多くみられましたが、Skagevegenという道に入るとのどかでローカルな感じになってきます。
車はほとんど通りませんが、乗馬の女性に出会いました。かっこいいですね!
うねうねとローカルな一般道を走ること7kmほどで、ようやく最後のカーブに差し掛かりました。
林を抜けると、空港の建物が見えた〜
道路の反対側の空港ターミナルには北側のロータリーを回って引き返すルートになり、ターミナルビルの前をいったん通過します。
ところでベルゲン空港では、数日前にこの新しいターミナルビルがオープンしたばかり。
真新しいターミナルビルの床、壁、天井には木が使われ、柔らかな雰囲気です。
とはいえオープン後間もなくスタッフもまだ慣れていないようで、「自転車は折り畳んだら普通の手荷物預かりでいいですよ」と言われて行ってみたらダメだったりと、やや混乱気味でした。
ベルゲンからオスロへの飛行時間は50分。すぐにオスロ空港に到着しました。
オスロ空港からは電車に乗って約30分。地元の自転車好きな乗客とおしゃべりしながらオスロ・セントラル駅へと向かいます。
フィヨルド地区を走ってきた話をしたり、オスロ郊外のお勧め自転車ルートを聞いたりしているうちに、あっという間にセントラル駅に到着です。
18日ぶりのオスロです。「帰ってきた〜」という感覚が湧いてきていいですね。
勝手知ったる道を宿に向かって走っていきます。
そしてオスロの夜は、またしてもアジア料理。3日連続ですが、今日はベトナム料理です。オーナーさんはベトナム人で、40年近く前にノルウェイに来たそうです。
たくさんの香草が添えられた揚げ春巻きにご満悦のサリーナです。超美しい景色あり、大変な道のりありのフィヨルド旅行を無事に終えて、満足感いっぱいのカンパ〜イ!
さて、明日はノルウェイ最後の1日。ゆったりとオスロ市内観光で過ごします。