今日から3日間のアマゾンジャングルのサイクリングツアーが始まります。ワクワク!
宿まで迎えに来てくれたツアーリーダーのルイス、そして車には運転手のギードとジャングルガイドのエサウが乗っています。私たち2人にスタッフ3人とは、これまで経験したことのないゴージャスな旅。
このツアー会社はインカズ・デスティネーション(Inkas Destination)といって、3日間でアマゾンジャングルを自転車で走れるツアーはないかとインターネットで探して事前に申し込んでおいたところです。
7時半にクスコを出発し、まずは南東方向へ。2日前にプーノからクスコへのバスで通った道を反対方向へと進みます。
45分ほど走ったオロペサ(Oropesa)というところで、車は1軒のパン屋の前に停まりました。
このあたりの道路沿いにはパン屋さんがたくさん並んでいます。パンを味見させてもらうと、なかなか美味しい。コーヒーをもらって小休止です。
パン屋の奥を覗いてみると、大きな窯でパンを焼き、長い柄のついた道具でパンを出し入れしています。
再び車に乗ると、すぐに車は左折し今度は北上していきます。
そしてウルバンバ川を渡り、クスコ・パウカルタンボ自動車道に入ります。
このクスコ・パウカルタンボ自動車道、なかなか凄いです。まずはどんどん高度を上げて、ウルバンバ川の流れる谷を見下ろすように、山の中腹を走っていきます。
写真はウルバンバ川が西のピサック方面へと流れていく谷の絶景です。クスコ・パウカルタンボ自動車道は、このあたりからウルバンバ川と別れて北上を続けます。
山の斜面にはやはり段々畑が設けられ、そんな山の中腹にへばりつくような集落も見えます。アクセス道路などは見当たらないので、徒歩で行き来するんでしょうね。まさに天空の村。
このあたりの山では石膏が採れるそうで、採掘して白やピンクの岩肌がむき出しになっているところもありました。
山を回り込むと次第に谷の傾斜が緩やかになり、住宅が現れてきました。
ウアンカラネ(Huancarane)というところのようです。
このあたりでは大きめの村のようで、道路沿いにはお店が並び、買い物をする人たちで賑わっていました。
ウアンカラネの村を北側から見たところです。緩い斜面に住宅地が広がり、その周りを畑や牧場が取り囲んでいます。
クスコ・パウカルタンボ自動車道はさらに北へと進み、尾根の上を走っていきます。
すると、進行方向右手後ろ側に白い頂きの山が顔を覗かせました。アウサンガテ(Ausangate 6,384m)です。この道路の標高は3,500m前後なので、さらに3,000mほど高く聳えているわけですね。
道路沿いにはときどき住宅が現れ、何かを待っているような人たちの姿も見えます。乗せてくれる車を待っているのかな。
と、今度は進行方向左手側に白い山の姿が。サウアシライ(Sahuasiray 5,818m)です。ピサックへ行く途中でも見た山ですね。
道路の両側にそびえる白い山々、本当にゴージャスな景色です。
そんな絶景を眺めていると、車はダートの脇道に入っていきました。すると、丘の上に円筒形の建物が並んでいます。
これはプレインカの墳墓の遺跡です。ニナマルカに到着しました。
これらの遺跡は『チュルパス・デ・ニナマルカ』(Chullpas de Ninamarca)と呼ばれており、13〜14世紀頃にニナマルカに住んだルパカ文明の有力者の墳墓だと言われています。円筒形の墳墓は30ほどあります。
ルパカ文明はチチカカ湖周辺で栄え、このような墳墓はチチカカ湖周辺でも見られるといいます。
墳墓の丘の上からは、なだらかに続く丘陵地と集落や畑の景色が見渡せます。
ニナマルカの遺跡で、サウアシライ山を背景にしたサイダーとサリーナ。
これから始まるサイクリングにワクワク、盛り上がっています。
そう、ここニナマルカの丘の上がサイクリングのスタート地点です。
車の屋根からマウンテンバイクを下ろしてもらい、出発の準備を始めます。ルイスにサドルを調節してもらうサイダー。
フルフェイスのヘルメットに肘あてをつけて、颯爽とマウンテンバイクにまたがるサイダー。
『いよいよサイクリングだ〜』と盛り上がっています。
一方サリーナは、マウンテンバイクに慣れていないのでちょっと不安げ。とりあえず、先導するルイスの後をゆっくりついていきます。
『バランスが悪くなるのでハンドルにバッグを付けない方がいいよ』と言われ、ここからサリーナはカメラを持たず、サイクリングに専念することにしました。というわけでサイダーの写真はほとんどありませんが、悪しからず。。
丘を回り込むと、丘陵地や山の景色が開けてきました。
『うわあ〜、いい感じ!』と気分は一気に盛り上がります。
ニナマルカの遺跡の脇道を出て、舗装路のクスコ・パウカルタンボ自動車道に入ります。
今日のサイクリングは、まず1時間ほど足慣らしのため舗装路をパウカルタンボまで下る予定です。車はほとんどなく、素晴らしい景色の中をビューンと下っていきます。
『調子はどう?』と先導するルイス。『もう、最高!』とサリーナ。サイダーは写真撮影に勤しんでいます。
正面左には、またしてもサウアシライ山が姿を見せてくれました。ああ、楽しすぎるサイクリング!
ところがクスコ・パウカルタンボ自動車道を11kmほど進んだときのこと。道路が塞がれていて、係の人が『左へ迂回して』と指示します。
ありゃ、道路工事中のようです。ずっと舗装路を行く予定が、西側の谷沿いにダートを行くことになってしまいました。
車はほとんど通らないとはいえ、谷の中腹を削った作りたてのようなこのダート道、左手は崖ですよ。
なるべく右側に寄り、砂埃を上げながら下っていくサリーナ。
下って下って谷底の川に近づき、対岸には住宅も見えてきました。
サポートカーが私たちの後ろを守ってついてきてくれます。
程なく道路の先に丘が、そしてその麓には町が見えます。どうやらパウカルタンボ(Paucartambo)に到着したようです。
ダートの下りは7kmほど。無事パウカルタンボに着いて、『やった〜』とサリーナ、サイダーとルイスがハイタッチ。
着いたところは市場の前で、町の中心は橋を渡ったところです。
街角には、果物ジュースのお店が出ていたり、買い物を終えて日影で一休みする人たちがいたりします。
その角を曲がると、
石造りの橋に出ました。この橋は『カルロス三世橋』といって、1775年にこの橋の建設を命じたスペイン王の名前がついています。5年もかかって完成したそうです。
パウカルタンボは、もともとアマゾンジャングルとアンデスの交易のための重要な町だったそうで、ジャングルで栽培されるコカの葉をはじめとして様々な交易品が行き交っていたそう。
カルロス三世橋のかかるマパチョ川です。
泥で濁ったように見えますが、この川を南へと遡っていくと先ほど見えたアウサンガテ山の麓に至るので、もしかしたら氷河の川なのかも。
橋を渡るとすぐに、白壁と青いバルコニーのコロニアルな建物に囲まれた広場に出ます。ガイドのエサウがパウカルタンボの伝説や祭りを説明をしてくれました。
云く、『16世紀頃、教会が建てられマリア像(ママチャ・カルメン)が設置されたが、信仰のなかったアマゾンの種族がその首を切って胴を川に流した。その後、川で見つかった胴体に頭を付けようと、スペインで作られたマリア像の頭部が送られてきた。マリア像の頭部は2つで、それぞれパウカルタンボとプーノに送られるはずだったが、送り先を取り違えてしまい、大きな頭が小さい胴体に、小さい頭が大きな胴体にくっつけられた。』
そして、パウカルタンボでは毎年7月15日から4日間、ママチャ・カルメンのお祭りが盛大に行われます。特別なミサとママチャ・カルメン像の行列、様々な民族の仮面を被ったダンス、夜の火祭りなどなど。
広場には、様々な装束の民族や職業の人々の像が並んでいます。また機会があれば、ぜひ見物したいお祭りですね。
この広場に面して、小さなミュージアムがありました。お祭りの仮面や、近隣の村の様々な手工芸品が展示され、ここで購入することもできます。町の運営するミュージアムなので、値段はとてもリーズナブル。サリーナがかわいい財布をゲット。
真ん中にあったのは、覆面の大男が女性を背負っている像です。係の女性がいろいろ説明してくださったのですが、残念ながら内容を忘れてしまいました。でも、恋愛物の話ではなかったような。
広場を出てカルロス三世橋に戻ると、橋の真ん中に人だかりが。覗いてみると、橋の下の川で魚をとっているところでした。
みんな興味津々で見つめています。
さて、この尖頭アーチのカルロス三世橋、建設以降何度も補修が行われましたが、車の通行は荷重がかかりすぎて危険だということで、車用に別の橋が設けられました。
この写真はその別の橋からの眺めです。
パウカルタンボからは車で峠を越えます。自転車での上りはなし。アシストカー付きの豪華ツアーならではですね。
しばらくはマパチョ川に沿って舗装路『マヌ自動車道』(Carretera a Manu)を進みます。
しかし、すぐにマヌ自動車道は工事のため通行止めとなり、ガイドのエサウの案内で谷の下の一般道を進みます。
チャリャバンバ(Challabamba)という村を通ると、学校があり子どもたちがお母さんを待っていました。
チャリャバンバを過ぎるとマパチョ川を離れ、いよいよ峠への上りに入ります。
ダート路を上り始めるとすぐに、周囲の景色が変化してきました。快晴だった空は、山の頂上あたりに厚い雲がかかり、枯野のようだった山肌は緑の低木に覆われています。
我らの車はギードの巧みな運転で、ダートの細い道をどんどん上っていきます。
川沿いのチャリャバンバの標高は2,800mくらいでしたが、すでに3,300mを超えています。周囲には雲が立ち込め、視界が狭まっています。
そして、ついに最高地点のアハナコ峠(Abra Acjanaco)に着きました。標高は3,500m。マヌ国立公園(Parque Nacional del Manu)の大きな看板が出ています。ここからマヌ国立公園に入ります。
マヌ国立公園はペルー最大の国立公園で、クスコ県とマドレ・デ・ディオス県にまたがり、その面積は15,328km²。アンデスから流れるアマゾン川支流のマドレ・デ・ディオス川流域に広がり、世界屈指の生物多様性を有します。1987年、世界遺産に登録されました。
私たちのツアーはそのほんの一角、クスコ県側のピルコパタに2泊する旅ですが、標高差はおよそ3,000m。そのダイナミックな気候の変化と生物多様性の一端を垣間見られることでしょう。
すでに13時を回っています。この峠でお昼にしましょう。各自が用意されたランチボックスを手に、道路から少し上るとオベリスクがありました。横にあるのはどなたの頭像でしょうか?
このオベリスクの周りでランチです。峠は周囲が見渡せるはずですが、雲に覆われてほとんど何も見えません。
これがランチボックスの中身。鶏肉のキヌア揚げ(甘辛ソース付き)、ブロッコリー、人参、きゅうりのサラダ、ブラウンケーキ、みかん、補給食、水。左下のクスケーニャは自前です。
結構美味しくて、補給食以外は完食。
ランチを終えて、再び車に乗って峠の反対側を下るも、しばらくは雲の中で周囲はほとんど見えません。
しかし、道のすぐ脇にも深い緑の高木や草が茂っているのがわかります。峠を越えると全く別世界に入ってきたようです。
細いダート道は、ヘアピンカーブを繰り返しながらどんどん下っていきます。
しばらく下ると雲の中から抜けて、周囲が見渡せるようになりました。うわ、ここどこ?というほど景色が変わっています。ここはまさにジャングルの中!
峠から45分ほど下ったところで、再び車の屋根から自転車を下ろしてサイクリング開始。準備を整えたサイダー、サリーナとルイスが気合いを入れます。
道しるべは『ピリャウワタの境界』(Hito Pillahuata)と書かれています。アップダウンや大きなヘアピンカーブの終わった走りやすいところを選んでサイクリング、というわけです。
サイクリング第二弾スタート!
今度は曇り空のジャングルの中、ダート道を下っていきます。
緩いカーブを描きながら、緑のジャングルをどんどん下るルイスとサリーナ。
わ〜い、またまた楽しい!
走り始めて20分ほどたったところのヘアピンカーブで滝を見つけました。パッチャヨク(Pacchayoq)という滝です。
滝を背景にしたサリーナ、サイダー、ルイス。サポートカーからエサウが出てきて写真を撮ってくれます。全く、ゴージャスな旅ですねえ。
さらに下り続けます。サリーナもだんだん調子が出てきました。
ときどき右手の視界が広がると、山の間の谷底には細い川が流れています。今は乾季なので、水量が少ないのでしょう。
道は、この川沿いをずっと下っているのです。
そして道が大きくカーブしているのは、概ねこの川に流れ込む支流を渡るところとなっています。
橋を渡る青い点がサリーナ。
視界が開けると、右手側が意外に急な崖になっていたりしてちょっとビビります。
周囲は緑一色ですが、よく見ると、ところどころにカラフルな花や葉っぱがあります。
自転車の通りすがりなのでうまく撮れませんでしたが、これは何という植物でしょうか。極楽鳥花に似ているようにも見えますが。
そんな山道の脇に、突然ニワトリが現れました。『ええっ、野生のニワトリ?』とサリーナ。『そんな、まさか!?』とサイダー。
実は、そのすぐ先に民家があったのです。これまで全く家はなかったので驚かされました。この民家は関所のようなところで、この道を通る車をチェックしてコカの葉を違法に持ち出さないように監視しているのだとか。
随分と下ってきたので、ちょっと停まって山々の重なる景色を眺めます。
『もうすぐ滝のスポットがあるから、そこで休憩しましょう』とルイス。再び走り始めます。
山道がぐっと谷を回り込んだところに橋のかかるヘアピンカーブがあり、そこで小休止です。
深い谷の底に立つサイダー。
そして、その向かいには随分高いところから滝が流れ落ちていました。
とそこに、観光客を乗せたミニバンが私たちを追い抜いて停車。ミニバンから人々が降りてきて、歩きながら木の上の方を見上げています。どうやらバードウォッチングをしている模様です。
ここはサン・ペドロ(San Pedro)というところで、近くにキャンプ場もあるようです。両側の鬱蒼とした緑は、いかにも鳥や猿が出てきそう。ここでエサウが、ペルーの国鳥とされるアンデスイワドリがいると言って双眼鏡を覗かせてくれたのですが、私たちには分かりませんでした。残念。
もっとゆっくりバードウォッチングはしたいけど、それは明日か明後日にすることにして先へと進みます。
川に沿ってどんどんと下り、
カーブでは滝の流れ落ちる道を行き、
そうこうしている間に、あたりは次第に薄暗くなってきました。日暮れが近づいています。
ジャングルの下りを始めたピリャウアタから3時間近くが経過し、標高差で1,500mほど下ってきました。このあたりで本日の自転車は終了。下りばかりとはいえ、よく走ったね〜とハイタッチするサリーナ、サイダー、ルイス。車の運転のギードも、ガイドのエサウもお疲れさま。
いえ、『お疲れさま』とゆったりしたのは私たちのみ。宿泊予定のピルコパタ(Pillcopata)までは、ダートの山道を車であと1時間ほど進まなければなりません。真っ暗になった悪路をガタゴトとしばらく行くと路面はやや改善され、パトリア(Patria)という村を過ぎ、そして19時にようやくピルコパタに到着。今度こそお疲れさまです。
着いた宿はガジート・デ・ラス・ロカス・ロッジ(Gallito de las Rocas Lodge)といって、笑顔のマダムが迎えてくれました。しかし、困ったことに『実は、今日は村中が停電していて、電気が使えないんですよ』。ええ〜?
ここピルコパタは村独自の水力発電設備を持っているのですが、それが故障したらしい。でもシャワーは3・4分なら使えるというので、懐中電灯でシャワーを浴びた後、宿の食堂で夕食となりました。
メニューはピアラクトゥス(Piaractus)という魚(通称『パコ』)のフライ、ゆでブロッコリーとニンジン、白ご飯にキャッサバです。パコはあっさりしていて美味しいけど、骨が多いので要注意。
今日は、快晴のアンデスと緑深いジャングルという、全く異なる気候と景色の中のサイクリングを存分に楽しみました。やっぱりペルーは凄い、奥が深いです。
さて明日は、まずマドレ・デ・ディオス川をラフティング、そして自転車でジャングルの村を訪問と、盛りだくさん。そして、バードウォッチングも楽しみです。アンデスイワドリに会えるかな?
ひとこと by サイダー
ペルー行きを本格的に検討するようになるまで、この国にアマゾン・ジャングルがあることを知りませんでした。知ったあともそこは、訪れる先の優先順位としてはほとんど番外でした。だってアマゾンだよ。とても普通の旅行者が行けるようなところではない、と思っていたのです。ところが不思議なことに、計画を進めるうちにアマゾンが気になり出したのです。我らがガイドブックのロンリー・プラネットは、50ペイジに渡りアマゾンを取り上げています。この機会を逃すと、アマゾンへは一生行くことはないかもしれない。
アマゾンへ行くかどうかはだいぶ迷いました。第一に遠い。第二に行き方がわからない。第三に、やっぱりどんなところなのか想像し難い。散々調べた挙げ句、結局アマゾンへは個人では入れず、公共交通機関もないことがわかったので、ツアーを当たってみました。するとアマゾンの心部とも言えるところまで行くとなると、最低一週間は必要らしいことがわかったのです。
これは無理だと諦めかけていた時に、アマゾンの入口だけならその半分ほどの日数で行け、さらにサイクリングのツアーがあることも判明。アマゾンへサイクリング! いいね〜 と思ったのですが、マウンテンバイクでダートを行かなくちゃあならないらしいということで、またもや躊躇。ツアー会社と二三やりとりをして、このダートは基本的には誰でも自転車で行ける道だということがわかったので、思い切ってこのツアーに乗ることにしました。
行って良かったです、アマゾン。乾燥したクスコから山を越えて一気に高度3,000mも落っこちると、そこの環境は口をあんぐり開けてしまうほどに、がらりと変わります。やっぱりテレビで見ただけではわからない、空気感や匂い。予定外の雨は残念でもあり、またアマゾンらしさを味わうことができて、良かったとも思っています。ペルーはどこも本当に魅力的ですが、このアマゾンも是非行くべきところです。