今日はジャングルに別れを告げて、車で一路クスコへ向かいます。
出発準備を待っている間、昨日のアチオテの赤い染料を使ってサイダーがエサウの両腕に名前をペイントし始めました。実は、昨日車の中で日本語の文字を説明していたところ、エサウが『腕に日本語で名前を書いてもらって、奥さんに見せて自慢したいなあ』と言っていたのです。
右手に『エサウ』、左手に『江左宇』と書いて漢字の意味も説明すると、エサウは大喜び。『もうシャワーを浴びられないよ』
そこにルイスが来たので、エサウが『見て見て。日本語で書いた名前で、意味は「大きい川」「左」「宇宙」だって!』とかなり自慢。
するとルイス、『俺にも書いてくれ!』。そこでまたサイダー、右手に『ルイス』、左手に『流井寿』と書いて、「流れ」「井戸」「幸せ・お祝い」と説明すれば、こちらも大喜び。
そうこうしている間に出発準備が整いました。
ロッジのマダムとお別れの挨拶です。美味しい料理やいろいろな気配りをありがとうございました。
8時ちょうどにピルコパタを出発。今日も雨が降っていますが、昨日のような土砂降りではなく小雨。次の村のパトリアの通りを急ぎ足で行き交う人々がいます。
ずっと車移動なので雨は関係ないと思われるかもしれませんが、雨で峠への一本道が崩れたりしていないかとちょっと心配していた私たちです。それほど昨日の雨はすごかった。
小雨のジャングルは木々の緑が一層深く、ところどころを霧が覆ってとても幻想的です。(TOP写真も)
8月半ばのこの時期のピルコパタの平均気温は最高31度・最低17度、1mm以上の雨が降る確率は10%程度らしいのですが、この3日間は涼しくて雨の日が続いてしまいました。でもまあ、雨のお陰で熱帯雨林らしい森を見ることができたということで、良しとしましょう。
ちなみに最も雨の多い1・2月は、雨の確率は60%近くにもなるそうです。
そして、車はジャングルの中のダート道を進む。
道路は崩れてはいませんが、泥水が道を横切って流れ落ちているところもあります。ギードが慎重に車を進めます。
横を見れば、ジャングルに霧がかかる風景が広がり、
下を見れば、道路から水が滴り落ちて小さな流れになっています。
山側の崖では、シダや大きな葉っぱの植物が密集して生い茂り、その中に黄色い花も咲いています。
そして、曲がり角では滝が流れ落ちていました。
ここは2日前に自転車で走っていますね。夕方の自転車ゴールの近くです。
ウネウネと蛇行を繰り返しながら、道は2日前とは反対に少しずつ上っていきます。
そして、左手の崖の下には、ジャングルの中を流れる川が見えます。
U字カーブのところに、はるか上から細く流れ落ちる滝がありました。
ここはサン・ペドロの近く。2日前に休憩して滝を眺めたところです。
滝が流れ落ちている川は、ピルコパタまでこの道と並行して流れています。
そして見上げれば、流れ落ちる滝が岩の表面を伝って降り注ぐ。
さらにジャングルを上っていきます。
上るにつれて、周囲が霧に覆われ視界がなくなってきました。雲がかかっている高さまで上ってきたわけですね。
道路の左手は、多分崖でしょう。。
その少し先に、民家とニワトリが現れました。コカの葉の持ち出しを監視する関所です。
ここでトイレをお借りします。
車から降りてみると、霧がかかっているものの雨は上っていました。
車に積んである自転車を見上げ、『自転車は初日だけで、ちょっと残念だったね〜』とサイダー。
再び車に乗って出発。周囲は相変わらずしっとりとした緑に覆われています。
そして、谷底に向かって流れ落ちていく小さな川を渡る。
霧の中、高木の枝のところどころに赤いものが見えますが、花か、葉か? この木の一部ではなく、寄生植物のようにも見えます。
左手のはるか谷の底に、細い川が流れています。
ピルコパタからは、既に2,000m以上の標高差を上ってきました。周囲は相変わらずのジャングルですが、やや高木の密度が少なくなったようにも感じられます。
小さなヘアピンカーブを繰り返すこの辺りはピリャウワタ。2日前にジャングル自転車走行を開始したところです。
2日前より霧が深いですね。
さらにその先でもヘアピンカーブを繰り返します。どんどん高度を上げて、3,500mのアハナコ峠まで上っていくのです。
周囲は濃い霧。霧の中から突然現れた対向車にちょっとビックリ。
アハナコ峠の手前は特に濃い霧に包まれていました。ギードの巧みな運転で峠を上り、そしてマパチョ川の方向へと下っていきます。
峠を越えると、雲の下に出てきました。
周囲の景色はジャングルから草っぱらの丘陵地へと変わっています。2日前に体験した光景ですが、やっぱり驚きです。
そして、マヌ自動車道は工事中のため、来た時と同様、狭いダート道を下りていきます。
峠を境に、あの湿潤な緑から土埃の舞う乾燥した景色に180度変わり、頭がついていけない感じ。
ともあれ、アンデスの高地側に戻ってきました。
川沿いの最初の村チャリャバンバに着いたようです。
チャリャバンバの広場はお昼前でのんびりムード。
広場を囲む塀には壁画が描かれています。ちょっと見るとパウカルタンボのお祭り装束の人々に似ているけれど、ここでもそんなお祭りがあるのかな。
ところで、道路沿いの建物の壁には、同じようなマークや名前が描かれているのをよく見かけます。例えばサッカーボールのマークとか。ここの壁に描かれているのは家みたいなマークです。
エサウに尋ねると、選挙の候補者の名前と政党のマークが描いてあるのだそうです。日本ではポスターを貼りますが、ここでは壁に直接描いてしまうわけですね。
車はマパチョ川の谷沿いに南へ、パウカルタンボに向かって走っていきます。
そして、そろそろパウカルタンボの町に入ります。
パウカルタンボも川沿いの傾斜地に築かれた町で、道路から山側を見上げると、長く急な階段の両側に建物が並んでいました。
幾重ものスカートに、黄色いフリルのような帽子を被り、大きな背負い布を背負った女性が通りを歩いていきます。
町の中心から、マパチョ川を渡ります。私たちが通っているのは車用の橋、そしてそこから南に見えるのが歩行者専用の『カルロス三世橋』です。
橋を渡ったら市場の前を通り抜け、2日前に自転車で通ったダート道へ。
そのすぐ先に、工事中のため交通規制をしているところがありました。
工事中って、崖を崩して岩を落としているように見えてちょっと怖い。交通規制は人力で行っています。2人がそれぞれ2種類の手札を持ち、緑の『SIGA』は『進め』、赤の『PARE』は『止まれ』です。
ここからは、砂埃のダート道をどんどん上る。
正面に、丘を削ってつくった道路がうねうねと続いているのが見えます。
自転車で下った細い谷の中腹の道を、車で上り続けます。
そしてもう一上り、カーブを曲がったら、
ようやく舗装路に出てきました。ああ、よかった〜。クスコ・パウカルタンボ自動車道に入りました。
自動車道を快走していると、右手にサウアシライ(Sahuasiray 5,818m)が見えてきました。
頂のあたりがちょっと雲に隠れています。
左手には、なだらかな傾斜の丘が続く。
その丘の向こうに白い頂が。アウサンガテ(Ausangate 6,384m)です。
右手には、ゴツゴツした黒い山脈。
あの山脈の向こう側に、ウルバンバ川の流れる聖なる谷があるはずです。
クスコ・パウカルタンボ自動車道は、ウアンカラネ村に到着。
村の中心部では、今日も賑やかにお店が並んでいます。
屋台には飲み物、そして大きな袋にトウモロコシが入っています。
ウアンカラネを過ぎると、クスコ・パウカルタンボ自動車道は深い谷の中腹を走る絶景エリアに入ります。
道路はまさに、山の中腹を削って進んでいます。
右手の眼下にウルバンバ川と聖なる谷が見えてきました。
このあたりの山では石膏を採掘しており、谷を挟んだ向かいの山は、岩を削られてピンクの岩肌がむき出しになっています。
谷を下りてきて、ウルバンバ川にかかる細くて赤い橋を渡ります。
ウルバンバ川は、ここから深い谷の間を通りながらピサック、そしてマチュピチュ方面へと流れていきます。
川を渡ってしばらく進んだ時のこと。『ちょっと待った〜!』とサイダーが叫ぶ。
見れば、道路脇の建物の前に、先端に赤い袋を被った棒がのびています。実は、これぞ『チチャ・デ・ホラ(トウモロコシのお酒)』のある印。サイダーはずっとこれを飲みたくて探していたのです。
チチャ・デ・ホラをつくっている家では、『チチャ・デ・ホラがあるよ』という印として、赤い袋を被った棒を出しておきます。
ここでは赤い袋の下に青い袋も付けていますが、これはここのオリジナル。
2階で売っているというので2階に上がると、女の子がチチャ・デ・ホラを汲んできてくれました。
写真は恥ずかしいからって隠れています。
巨大なグラスに入っているのは濁った薄茶色の液体です。表面には泡、ビールのようですね。
チチャ・デ・ホラを飲む時には、まずは大地の神様パチャママに捧げるのが礼儀。ルイスに教えてもらい、大地に捧げてから『カンパ〜イ!』。
そしてサイダー。待ってました〜、と豪快に飲みます。
それにしても、この1杯はかなり量が多いですね。
チチャ・デ・ホラは、プレインカの時代から中央アンデスの各地で儀式やお祭りに使われてきた聖なる飲み物です。トウモロコシのビールのようなもので、トウモロコシをモルトにして発酵させて作ります。
味はマイルドなビール、いやどぶろくかな。ちょっと酸味ありです。アルコール度数は1〜3%くらいだそうです。
チチャ・デ・ホラを楽しんだあとは、幹線道路に入りクスコ方面へ。ところで時刻はもう午後2時を過ぎています。かなりお腹が空いてきました。クスコに入る前に昼食にしましょう。
ここティポン(Tipón)はクイが名物で、クイをお皿に乗せた女性の像が立っています。クイはアレキパで食べたので、ここはスルーして、もう少し先のチチャロン(Chicharrón 豚肉の素揚げ)で有名なサイリャ(Saylla)に向かいます。
『このあたりは、クスコから家族でわざわざチチャロンを食べにやって来るほど、現地の人たちに人気の場所なんだよ』とルイス。エサウのお勧めのレストランに入りました。
とりあえずここで、3日間のジャングルツアー無事終了を祝ってカンパ〜イ! ごめん、運転手のギードだけはインカコーラです。
料理が出てくる前に、ツマミとして出てきたのはこれ。パリパリのえびせんみたいな感じですが、これは豚の皮を揚げたもの。トウモロコシを揚げたカンチータもついています。
そして、看板メニューのチチャロンがやってきた。大きなポテトフライとサラダ付き。
スパイスをきかせてかなりディープに揚げてあり、サラダと一緒に食べると味わい深い。
もう一品は、アドボ・デ・セルド(Adobo de Cerdo)。豚肉をチチャ・デ・ホラやスパイスと一緒にマリネして、タマネギやアヒ(唐辛子の一種)と一緒に煮込んでつくります。
柔らかい肉と、少し酸味のあるスープが美味しい。このアヒはちょっと辛かったです。
名物料理をお腹いっぱい食べて満足。すると、小さいグラスに入った透明な液体が出てきました。
これは、チチャロンなどを食べたあとに、消化を助けるということでよく飲まれているお酒『アニサード(Anisado)』、つまりアニス酒です。サイダーがまず大地の神に捧げた後、カパッと一気飲み。
ゆっくり昼食を済ませたあとは、クスコに戻るだけ。
ホテルに戻る途中でエサウとはお別れ。豊富な知識でジャングルの生活や文化をいろいろ解説してくれて、バードウォッチングでもお世話になりました。
そしてクスコのホテルに到着。ツアーリーダーのルイス、そして運転手のギード、3日間ありがとう。
クスコに着いて、乾燥した空気の中の青空を眺めると、午前中までジャングルにいたことが夢のようです。ペルーの多様性にまたまた驚かされた貴重なジャングルツアーでした。
さて、明日はクスコ近郊のマラスとモライの遺跡を自転車で巡るツアーです。当然、快晴間違いなし!