師走になりました。毎年のように訪れているのに今年は行っていないところがあります。そういうところはやはり行かないと、年を越せないような気分になります。
というわけでやってきました。多摩丘陵に。今回下車したのは始めて使う稲城駅です。
いつも行くところで今回もメインの場所に据えているのは、多摩の原風景が今でも残る小野路周辺です。そうした風景が失われることになったのは、このあたりが東京のベッドタウンとして開発されたためです。今回の序盤はその多摩ニュータウンの入口にある稲城の団地を走ります。
稲城駅から北に下るとすぐに三沢川に出ます。三沢川は川崎市黒川の谷戸に流れを発し、布田で多摩川に注いでいます。この三沢川は実は多摩ニュータウン開発上、大きな鍵となる流れでした。
稲城駅からまず向かうのは高台にある稲城中央公園。多摩は多摩丘陵と言われるくらいなので、そこら中アップダウンだらけ。三沢川を離れるといきなりきつい上りです。
里山を切り開いて多摩ニュータウンを開発するとその雨水処理が問題となります。雨水は当然その地で一番低いところを流れる川に注ぐことになるわけですが、当時の三沢川にはその雨水を多摩川まで運ぶ能力がありませんでした。
当然ここで三沢川の大改修というものが発生しますが、多摩ニュータウンの開発主体は東京都、三沢川の下流域は神奈川県川崎市という問題がありました。東京都の開発のために神奈川県や川崎市が財政支出することは考えられないのです。そこで川崎市を通らない分水路が造られることになりました。それが現在の三沢川分水路で、これは稲城中央公園の南で三沢川から取水され、稲城中央公園の下をトンネルで抜け、JR南武線の多摩川橋梁の西で多摩川に注いでいます。
稲城中央公園に出ました。
この公園は稲城市のほぼ中央に位置し、グラウンドや体育館などのスポーツ施設を含む地区公園として整備されました。20haとかなり広いです。
そのグラウンドの南側には多摩丘陵の原風景である自然林が残されています。
多摩ニュータウンが開発される前のこのあたりはこんな風景だったわけです。
稲城中央公園を抜けると歩行者と自転車専用の『ぞうさん橋』で上谷戸大橋通りを渡ります。
向こう側には長峰の高層団地が見えています。
この団地は京王線の車窓からもよく見えます。南斜面にあり、いつも陽の光を浴びて輝いています。
日当りの良いここは自転車で走っても気持ちがいいです。
高層団地を出て戸建住宅地を抜けると上谷戸大橋の下に出ました。
そこはかつては谷戸であったことが伺えるところで、現在は上谷戸親水公園として整備されています。
東西に伸びる谷でこの時期は日当りがないのが残念ですが、こうしたところが少しでも残ってくれるのはうれしいです。
上谷戸親水公園を上って行くと若葉台公園に入ります。
この右手のずっと下に上谷戸親水公園があるのですが、ここまで上るのに一苦労。やっぱり多摩ニュータウンに年寄りが住むのは大変です。
多摩ニュータウンの良いところの一つは、主なところは歩行者と車の動線が分離されていて、安全に移動できることです。自転車は移動レベルに合わせてそのどちらも使えるのがまたいいところです。
おしゃれな若葉台小学校を廻り、町田調布線を歩行者・自転車専用ブリッジでオーバーバスし、
若葉台中央通りに下りました。
ここからは少しの間、車との共存地帯を行きます。
上麻生連光寺線を上り、丘の上広場に入ります。上麻生連光寺線側の入口付近には不思議な石がいくつも置かれています。
この広場はここから唐木田配水所まで尾根に10km続く遊歩道『よこやまの道』の起点になっています。
丘の上広場の一番高いところからは、そのすぐ西に架かる『弓の橋』と奥多摩から秩父あたりにかけての山々が見えます。
ここからはしばらく『よこやまの道』を進みます。
この尾根道は古くから交通の要衝で、鎌倉古道をはじめいくつもの古道が通り交わるところでした。ニュータウンの計画でそれがなくならず、遊歩道として整備されたのはうれしいことです。
『よこやまの道』は尾根に続くので見晴らしはある程度あるのですが、周囲は木立に囲まれたところが多く、どこもかしこも眺めがいいというわけではありません。
そんな『よこやまの道』の中でもっとも眺めが良いのは『防人見返りの峠』でしょう。
丘の上広場からその『防人見返りの峠』へ向かうと、一ヶ所階段があります。本日唯一の担ぎです。
階段を登って少し行くと『防人見返りの峠』に着きます。ここはまた『多摩丘陵パノラマの丘』とも呼ばれるようです。
足下には多摩ニュータウンのタウンハウス永山、遠くには丹沢山系の山々と富士山。
『防人見返りの峠』からも『よこやまの道』は続きますが、ここでいったん黒川に下ります。
黒川には谷戸があり、この中で今日の始めに出会った三沢川の流れが始まります。
『よこやまの道』は尾根煮続いており、黒川谷戸は谷ですから、ここから『よこやまの道』へは当然上りとなります。
ここはちょっときつい。
『よこやまの道』へ復帰すると、その後は国士舘大学のあたりを抜けて、googleマップに古道五叉路とある地点から現鎌倉街道のr18をオーバーパスする道に下ります。
そして妙櫻寺から本日のメインの場所である小野路の里山へ分け入ります。
普通の道路からちょっと入ったところにあるのは恵泉女学園大学の研修農場です。
この畑になにやらノソノソと歩くものの姿が。ん〜ん、年老いた猫? と思ったのですが、良く見るとそれは狸のようでした。残念ながら写真に捕えることはできませんでしたが。
農場から先へ進むと右手が落ち込んだ谷戸の奥に出ます。
谷戸とは言ってもここに田んぼはなく、今は作物がない小さな畑が広がっています。
谷戸の向こう側の林の中にはまだ赤い葉を残した木々が数本あります。もうすっかり紅葉は終わったろうと思っていましたが、今年のそれは少し遅かったですからね。
谷戸を下るとシュンシュンが時々買い物をする野菜の直売所があります。
今日は大根とホウレンソウです。柚子はもうおしまいか、、、
野菜直売所でVターンして布田道に入ります。
この道は鎌倉時代からこの先にある鎌倉街道の宿場であった小野路宿と調布の布田宿を結んだ道だそうです。
現在はほとんど人が通らないこの道の先から、なにやら賑やかなかけ声が聞こえてきました。
なんとそこにあったのは場違いな感じの野球のグラウンドで、そこで野球のユニフォームに身を包んだ人々がかけ声とともにランニングをしているのでした。
野球グラウンドの横の激坂を上って進んで行くと『関谷の切り通し』に出ます。
ここは平安時代末期の豪族で、のちに鎌倉幕府のご家人となった小山田氏(おやまだし)が関所を構えていた場所と伝わります。 小山田はの名がこの辺りの地名として残っていることを考えると、相当な力を持った一族であったことが伺えます。
ここはいつ来てもわくわくするところですが、今回気になることがありました。それはこの道に境界を示す鋲が打たれていたことで、それをチェックしていると考えられる人がいたことです。もしかするとここで近い将来何かが起こるかもしれません。
関谷の切り通しから下ると町田日野線に出ます。現在その面影はほとんど残っていませんが、かつてはここが小野路宿でした。
町田日野線を横切って小野路城方面へ向かいます。
薄暗い林の中を上って行くと、突然明るいところに出ました。ここは周囲を林に囲まれた畑で、陽の光がポカポカと気持ちが良いところです。
その畑の周囲を廻るようにして進んで針葉樹林に突入。ここは木の根っこがボコボコ飛び出ていてちょっと走りにくいです。無理をせずに押しましょう。
針葉樹林を抜けると今度は広葉樹林に入ります。木々はほとんど葉っぱを落としていて、落ちた葉っぱもほとんどボランティアの方がかたずけてくれたようです。
落ち葉をカサコソ踏んで進み、広葉樹林を出ると黒牛さんがいる牧場です。
よく水牛に小鳥がとまっているところを見ますが、この黒牛さんの横にはこちらも真っ黒な烏がいました。烏も牛の虫を食べる?
黒牛さん牧場からダーッと下り、萬松寺に向かいます。
萬松寺の入口には赤い頭巾のお地蔵さんが立っています。これは六地蔵のはずなのですが、どうしたわけか七体あります。一つおまけですね。(笑)
ここは極めて深い森ではありませんが、木々は鬱蒼としていて、ちょっと現実界から離れたような印象があります。
萬松寺の先には万松寺谷戸が奥に伸びています。ここは今でも田んぼなのがいいですね。
万松寺谷戸の先で激坂を上って小さな畑の横を通り抜けて進めば、『乗越八幡跡』の標識が立つT字路に出ます。この道を左に進めば町田日野線に出、右に行けば小野路城址を経て『よこやまの道』奥州古道方面に出ます。この道はかなり古くから主要な道であった可能性があります。
乗越八幡跡からは小野路城址方面へ向かいます。
この序盤はちょっとガレていて走りにくいですが、そのうち写真のようななかなか素敵な道になります。
ふと立ち止まったところにあったのはキノコに多い尽くされた木。
枯れてキノコが生えたのか、キノコに覆われたから枯れたのか。
小野路城址に到着。小野路城址にはかつてのお城の形跡はまったく見当たりません。土地が周辺より僅かに高くなっているような気がしなくもないですが。
ここの木々にはまだ少し紅葉が残っていました。写真ではあまりパッとしませんが、なかなか色がきれいです。去年のここはあまり良くなかったことを思い出しました。
現在小野路城址には小さな社が立っています。八雲神社というようです。
ここに一人のマウンテンバイカーがやってきて、八雲神社の横をすーっと下って行きました。これまでここで自転車乗りに出会ったことはなかったのでちょっと驚きました。
小野路城址からは奈良ばい谷戸に向かいます。
おっと、倒木だ〜!
昨日は天気が今ひとつで場所によっては雨が降ったようです。奈良ばい谷戸に下る急な斜面は濡れていてつるつる滑ります。ここで一人すってんころりん!
谷戸の一番上に着きました。
丹沢の向こう側に富士山がちょこっとだけ頭を出しているのが見えます。
いつも今頃の季節はここでボランティアの方が作業をされているのですが、今日は見当たりません。ここに来るのは土曜日であることが多いのですが、今日は日曜日。作業日は土曜日なのかもしれません。あるいは今年の作業はもう終わったのかも。
谷戸の縁を下ってくると、いつものところにいつものように藁ボッチが三つ立っています。
いつもと違うのは真ん中の藁ボッチになにやら赤いものがくっついていること。
カラスウリです。某はこれを知らずに、柿かな〜って言うもんだから、みんなで爆笑しました。
ここには今年から新しい仲間が加わったようです。 ん〜〜ん、ふくろうかな〜
ここでシロスキーが合流。最近少し調子がいいので出てきたそうです。
予定では奈良ばい谷戸を出たら小山田緑地に行く予定でしたが、みなさんお腹が空いたということなので、昼食を先に済ませることにしました。
昼食は桜台通りの上にあるイタリアン・レストランです。道を一本間違えて上り出してしまったので最後は階段になってしまいました。すまん。
今日はまったりムードでデザート付き。もう1日終わった感じです。(笑)
午後の部は午前中パスした小山田緑地から。
今日は小山田緑地の西を流れる堂谷戸川側からアプローチします。民家の軒先をかすめて畑の中を登って行きます。
このアプローチにも僅かながら紅葉が。特別取り上げるほどもない景色ですが、いい感じ。
見晴らし広場に登ってきました。ここは丹沢方面の見晴らしが素晴らしいです。
位置的には富士山も見えるのですが、残念ながらこの時それは雲に覆われていました。この広場の奥にはピクニックテーブルがあるのでそこでお弁当を広げるのも楽しそう。陽当たりも眺めも良いここは、半日ぼーっとしていてもいいところだと思います。
小山田緑地の見晴らし広場から下り、堂谷戸川沿いをアサザ池へ向かいます。
道端には柿の木とサザンカが。柿は赤い実を付け、サザンカは白い花を咲かせています。どちらもそろそろおしまいのはずですが、今年もここで見ることができました。
見晴らし広場付近の民家が立ち並んでいるあたりでは気が付きにくいですが、奥へ進むとここが谷戸であることがはっきりわかります。この谷戸は耕作放棄地が多くなってきているようです。
アサザ池に到着。
アサザは一時レッドデータブックに載るなど絶滅が心配された植物ですが、現在は準絶滅危惧(NT)まで下げられました。しかし現在のアサザはどうやらクローンらしく、種子はできないようです。夏に小さな黄色い花が咲くのですが、今の時期は当然それは見られず、葉もだいぶ少なくなってしまったようです。
アサザ池からはやってきた道を戻ってゴルフ場の間のいやな急坂を上り、トンボ池に下りました。
この池には初夏にトンボが産卵にやって来るそうなのですが、今の時期、その姿はありません。水中にヤゴがいるのかな。そうそう、ヤゴである期間はさまざまで、数週間のものもあるし数年のものもあるそうです。
トンボ池を出て北へ向かえば、小さな畑の向こうに森が見えます。かつてこのあたりはどこでもこんな風景だったのでしょう。
町田平山八王子線の『山の端』から唐木田2丁目までは2車線の立派な道が続いているのですが、私たちはそのすぐ東を通るひっそりした裏道を行きます。
そして立派な道に出たあと、代官坂に上ります。
この代官坂の手前は激坂です!
代官坂は武蔵国と相模国にかけて開かれた48の札所を繋ぐ武相観音巡礼道とされる道で、これを下って行くと小山田氏の城があったとされる11番札所の大泉寺付近に出ます。
代官坂の北の端は奥州古道常磐道で、その辻には『巡礼古道の代官坂と奥州古道の辻』という案内板と嘉永2年(1849年)と刻まれた地神塔が立っています。
『巡礼古道の代官坂と奥州古道の辻』まで出て『よこやまの道』を西へ行きかけたのですが、ダートはいやだというものがおり(笑)、普段は使わない通称尾根幹こと南多摩尾根幹線道路に下って長池公園を目指すことにしました。
『よこやまの道』の終点である唐木田排水所の下を通り、尾根幹をオーバーパスして長池公園に入ります。
長池公園には夕陽展望台というところがあるのですが、そこからは周囲のお山が見えずにちょっと残念。
この公園は北の入口から入って池の辺りの雰囲気を楽しむべきかもしれません。
長池公園を出たら尾根緑道に上ります。尾根緑道は歩行者と自転車の専用道なので安心して走れます。
もみじが最後の赤い葉を輝かせていました
小山内裏公園の東展望広場に到着。今日はすっかり遅くなってしまいお日様は丹沢の影にほとんど隠れてしまっています。
私が好きな三ツ目山はパスし、橋本駅に直行。
お疲れナマ酒〜
今年も1年ありがとう!