ジオポタ恒例の夏の『なんちゃってキャンプ』は、今回は群馬県の渡良瀬川の上流にある沢入(そうり)にしました。
今日は大暑で土用の丑。7月も下旬になり、例年なら梅雨が明けてピーカンの暑さ真っ盛りのはずですが、今年はえらく早く梅雨明けしたのに、その後はなんだかぐずぐずした天気が続いていました。今週も昨日まで雨でこの日もどうなるかまったく読めなかったのですが、運良く日光の天気は曇りで気温は26°Cという、この時期としては最高のコンディションです。
しかし、このところの連続猛暑日に恐れをなして走行を取りやめるメンバーが続出で、日光の駅前に集まったのはコテッチャンとサリーナ、そしてサイダーの3名だけになりました。
東武日光駅を出て、大正時代の始めに建てられたJR日光駅のネオ・ルネサンス様式の駅舎を眺め、その前に湧く天然水をボトルに汲んだら、鬼怒川の支流の大谷川(だいやがわ)沿いに出ます。
大谷川の上流は中禅寺湖で、そこからから落ちるのは日本三名瀑のひとつに数えられる華厳の滝です。
晴れていればここからは正面に中禅寺湖の北に位置する男体山(2,486m)が見えるのですが、この日それは雲に隠れていました。
大谷川沿いの道が広い道に突き当たると、その正面に神橋(しんきょう)が現れます。神橋は日光の象徴である男体山(二荒山)をご神体といて祀る二荒山神社(ふたらさんじんじゃ)の入口に架かる橋で、その下を流れるのが大谷川です。
神橋の先には日光東照宮へ通じる参道があり、かつてこの橋は将軍や日光例幣使、そして山伏しか渡れなかったそうですが、現在はお金を払えば誰でも渡れるようになりました。
その神橋の先にあるのがこの杉の大木と石の鳥居。
ここを入って行くと日光東照宮があり、そのさらに奥に二荒山神社があります。
神橋を眺めたら大谷川に沿ってその上流へ向かいます。
正面に見えるごろっとした山が男体山ですが、頂上はまだ雲の中。まあ今日は快晴より少し雲が掛かっていた方が走りやすいですから良しとしましょう。
国道を逸れて浄光寺前まで進むと、そこにはちょっと変わった石の構造物が並んでいます。
このずんぐりしたものは石升で、近くにある湧水を水源とした大正時代の水道施設です。
現在この石升は8基残っています。表に『水神』と彫られた石碑には、『大正天皇御即位記念 大正四年十一月竣功』とあるので、このすぐ近くにある田母澤御用邸と関係があるようです。
浄光寺の前から坂道を下って、大谷川に架かる橋を渡ります。
これまでここに来たのはいずれも秋だったので木々は紅葉していましたが、今回は夏の盛りなのでそれは深い緑色です。
橋を渡って進むとほどなく憾満ヶ淵(かんまんがふち)に到着。
日光植物園の対岸にある憾満ヶ淵は、男体山が噴出した溶岩によってできた大谷川の渓谷です。先ほど渡った橋の下を流れる大谷川とこの流れが同じだとは、ちょっと信じられませんね。
ちなみにかの松尾芭蕉は、『奥の細道』に出発して日光では東照宮、裏見の滝、そしてこの憾満ヶ淵に立ち寄っています。
憾満ヶ淵には遊歩道が続いており、その横に苔むした地蔵がたくさん並んでいます。
ザワザワ〜っといい音。
涼しい! 遥々日光までやってきた甲斐がありました。
ここに並ぶ地蔵は数えるたびにその数が変わるといい、化け地蔵の名があるそうですが約70体あるそうです。
わりとリアルなお顔。
憾満ヶ淵からは階段を上って上の道に出ます。
その先はダートで、さらに草茫茫の中を行き、こんな担ぎの山?越えも。
出たところは『やしおの湯』。
さすがに日差しは強く木蔭がないと暑いので、ここの自動販売機の冷たい飲み物で喉を潤しました。
やしおの湯を出るとほどなく和之代大谷橋(わのしろだいやばし)を渡ります。
その橋の上から西を見ると薬師岳が見えますが、今日はこれからあの山間を行き、細尾峠を越えて足尾に抜けます。
足尾と言えば足尾銅山ですが、その経営者だった古河財閥系の古河電工の工場が立つ清滝を通り抜けます。このr277小来川清滝線はR122の旧道です。
その清滝から正面に見える山が先ほど和之代大谷橋から見えた薬師岳で、細尾峠はちょうどここから見える二つのピークの間にあります。
清滝を抜けたら細尾大谷橋を渡り、細尾に入ります。
R122の旧道は清滝にもありましたが、細尾からも先へ続くので私たちは旧道を進んで行きます。これを行くと細尾峠を越えて足尾へ抜けることができます。
少し行くと先に高架橋が見えだしますが、あれが現R122です。
その高架橋をくぐるとすぐ、小さな左沢橋を渡ります。
この左沢橋の先にあるのが『長い長い峠道案内図』。
これによるとここから、ゲートまで1.3km、そして細尾峠までは8km、足尾の国道までは12kmです。細尾峠までの高度差は400m少々で平均勾配5.3%といったところ。
さて、では長い長い峠道を行くことにしましょう。
まずは針葉樹林の中を行く真っすぐな緩い坂道です。
横には左沢川が流れ、木蔭と気化熱で涼しい。
第1カーブを廻るとちょっと勾配が上昇しますが、その先も直線の道なので、そうきつい勾配ではありません。コテッチャンは、
『ここは上りやすい道ですね〜』 という評価。
ここは谷側に一瞬視界が開きます。
2番目のカーブはすぐにやってきてその次のカーブに差し掛かると、そこには『カーブNo.3』という表示がありました。かつてここがR122だったころには、すべてのカーブにイロハ坂のように番号が表示されていたのかもしれませんが、格下げになったのでおそらく主要なカーブにのみ表示を付けているのでしょう。
ほどなく足尾10.7km、細尾1.3kmの標識があります。
そしてこの案内標識のすぐ先に細尾側のゲートがあります。
このゲートはこれまで私たちが訪れたときは閉まっていたことはないのですが、大雨時や冬季には通行止めになるようです。この道はほとんど車は通らないのですが、ゲートが開いているということは車も通れるということなので、一応頭に入れておきましょう。
ゲートの先で視界が開けるとそこは日足跨道橋で、下には現R122が通ります。
このあと現R122は2,765 mもある日足トンネルに入ってしまうので、足尾に下るまでもう出会うことはありません。
日足跨道橋を渡るとそれまで針葉樹が多かった景色に変化が現れます。陽の光を通す広葉樹が道の周囲に広がり出しました。
この緑は陽の光を透かして輝き、適度に直射日光を遮ってくれるのでとても快適に進んで行けます。さらに昨日は雨だったので、地面や木々が水分を多量に含んでいて、気化熱があってとても涼しいです。いや〜、今日は何もかにもがいい方向に働いてくれました。
ヘアピンカーブが多くなってきて峠道らしくなりますが、依然として勾配はそうきつくはなく、なんとか上って行きます。
この道は古くは日光山の僧の峰修行のために開かれたものだそうですが、その後足尾銅山の銅を運搬するために整備されたので、馬車が行き交えるだけの緩い勾配にする必要があったのだろうと思われます。
この道ばかりでなく、古い街道はみんな勾配が緩いですね。
馬車が上れる道なら自転車も上れます。(笑)
この日光側の最大斜度は10%くらいのところがちょっとあったかもしれませんが、それは長くはなく、感覚的には8%くらいと思っていいでしょうか。
サイクリングは夏でも比較的涼しい運動と言えます。スピードを出すことで風を受け、かいた汗が気化して体温の上昇を押さえるのです。しかし上り坂の場合はそうはいきません。スピードが出ないので風をあまり受けられないため、このラジエーターシステムがうまく機能しないのです。
ですから夏の峠越えはしにくく、慎重にやらないとオーバーヒートしてえらい目に合うことになりますが、ここは涼しくて快適です。
7合目付近まで上ると左手に薬師岳が見えるようになります。この道は雰囲気は良いのですが眺望はあまり開けておらず、3〜4ヶ所で薬師岳がちょっと見えるだけです。
空も山も夏の色。
峠までもうちょっととわかったコテッチャンはここでダッシュ。
サイダーとサリーナはおいてきぼり。(笑)
8合目を越えると、『カーブNo.32』の標識が現れました。
峠までのカーブ数はいくつだったか覚えていないのですが、もうちょっとのはず。
ところがNo.32からも意外とカーブは多く、小さなものも入れると10箇所ほど廻って、ようやく細尾峠に到着。
カーブ数は足尾側は34だそうですが、日光側は40ちょっとかな。
細尾峠は苔むした石積みの切り通しで、細尾と足尾それぞれまでの距離が書かれた案内板が立っています。
『やったぜい!』のポーズのコテッチャンとサリーナ。
今回はこの細尾峠にはだれもいませんでした。ジオポタ独占峠! (笑)
細尾峠には眺望がないので、一息ついたら足尾へ下りだします。
下りはラジエーターシステム全開でとっても涼しく、いい気持ち!
この峠道の勾配は緩いといいましたが、足尾側は日光側よりもきついです。
下りはラジエーターの効率は良いのですが、こちら側から上るとオーバーヒートしそうです。
視界が開けて谷が見えます。
細尾峠の北には大谷川が流れていましたが、南のこちら側を流れるのは渡良瀬川の上流の神子内川(みこうちがわ)。
で、細尾峠は分水嶺なのだと思っていましたが、大谷川は鬼怒川の支流で、鬼怒川も渡良瀬川も利根川に流れ込んでいますから、これは間違いでした。
少し下ると最大勾配14%というもの凄いヘアピンカーブが連続する地蔵坂が出てきます。ここは写真を撮っている暇なし!
地蔵坂を下り終えると小さな沢が滝状になって神子内川に流れ落ちています。
道の勾配がかなり緩くなって、国道との合流点に到着。
ここが足尾側の旧道の出口で、細尾側同様にここにも『長い長い峠道案内図』が立っています。
国道に出ました。これが日足トンネルを抜けてきたR122。
車が少ない直線基調の緩い下りは高速ダウンヒルに適しています。
ビューンと下って、昼食に予定していた中華料理店に予定時刻ぴったりに到着。車組は各自適当なところで昼食を済ませているだろうと思っていたのですが、ベネデッタがここで待っていたので4人でランチです。
ベネデッタは開口一番、『暑くて大変だったでしょう!』
と言うのですが、とても涼しくて快適だったと応えると、びっくりしていました。こんな日は車で国道を走った方が暑く感じるかもしれません。
昼食のあとは沢入のキャンプ場に下るだけです。
神子内川に架かる神子内橋を渡り、
足尾の街の手前で神子内川の左岸の道に入りました。
この道は鄙びていて木蔭も国道より多く、サイクリング向きです。
足尾の街の入口で神子内川は松木川と合流し、渡良瀬川となります。その渡良瀬川に架かるのが明治時代に造られた渡良瀬橋で、このすぐ先に足尾銅山の迎賓館だった古河掛水倶楽部があります。
ちなみに森高千里さんの歌にある渡良瀬橋はこれではなく足利にあります。
わたらせ渓谷鐵道の足尾駅に到着。
今回は残念ながら列車はプラットフォームに入っていませんでした。駅の自動販売機で冷たい飲み物を補給。
足尾の街のメインロードを行きます。
この道はかつては銅街道(あかがねかいどう)と呼ばれたものですが、当時の栄華は今はなく、ひっそりしています。
通洞までやってきました。ここはかつて通洞坑という坑口があったところです。
道端には廃墟になった通洞変電所が立っています。足尾周辺にはこうした銅山に由来したものがまだ少し残っています。
渡良瀬川にその支流の庚申川が流れ込むところには二本の切幹橋が架かります。R122とその旧道に架かるものです。
旧道の橋のさらに向こうには、わたらせ渓谷鐵道の第二渡良瀬川橋梁が見えます。
このあたりになるとようやく、渡良瀬川の川面が見えるようになります。
R122は日影がなく照り返しがきついので暑いのですが、この日はラジエーターがばんばん効いてまったく問題なし。とても快適に下れました。
利根川に合流する前の渡良瀬遊水池あたりを流れる渡良瀬川はゆったりした流れですが、ここはまだ渓流の趣です。
足尾トンネル(483m)と沢入トンネル(494m)とを抜けて沢入に入り、国道からその旧道のr343に入ります。
ここは江戸時代は銅街道の宿駅で御用銅問屋が置かれていたところです。
沢入の街外れにあるキャンプ場に予定より30分早く到着。
横に渡良瀬川が流れ、周囲には木々が多く、広々としていてなかなか雰囲気の良いところです。
私たちのバンガローは一番奥の2棟で、トイレと洗い場付。
このキャンプ場にはこの他に、大きさや設備が異なるバンガローとトレーラーハウス、そして一般的なキャンプサイトがあります。
走行中は走っている時よりキャンプ場の方が暑いのではないかとちょっと恐れていたのですが、いえいえどうして、ここもかなり涼しくて良かったです。まったくストレスなし。
キャンプ場の一番乗りはレイナとレイで、ベネデッタも到着していました。荷物を降ろしているところにタキスキーがやってきたので、みんなで近くの国民宿舎サンレイク草木へ行き、汗を流すことに。
サンレイク草木までは自転車だとちょっとあるのですが、車があればすぐ。こういったところはやはり車にお世話になりましょう。
さっぱりしたらキャンプ場に戻ってBBQの準備に取りかかります。
本日のメンバーは左より、酒デリバリー係のレイナ、酒選定係のレイ、コテッチャン、蚊取り線香を忘れた蚊取り線香係のタキスキー、シェフ・ベネデッタ、サイダー、カメラはサリーナでした。
火の管理担当はサイダー。食材調達と焼き担当はシェフのベネデッタ。
前菜は塩揉みキャベツ。そしてピーマン、茄子、玉葱に始まり、イカ、エビ、ホッケ、豚肉、牛肉、餃子と焼き進んでいきます。最後は焼きおにぎりで〆。
そんなに食べられないよ、ベネデッタ、作り過ぎ! もうおなかいっぱい。焼きそばとスイカはまったく食べられませんでした。ごちそうさま!
このあとはバンガローのデッキで深夜まで酒盛りが続いたのでした。あ〜楽しかった!!
さて、今日の走行は予想に反して条件が完璧に揃い、とても快適に走ることができました。日光の気温が低かったこと。ピーカンではなく半分曇りだったこと、そして前日の雨で大量の水分が気化熱を作り出してくれたこと。木蔭がたくさんあったこと。足尾側は高速下りでラジエーター効果が抜群だったこと。
走行後にお風呂に入れたのも良かったですし、もちろんみんなでやるBBQは最高でした。みなさんに感謝。またやりましょう。
キャンプ関係持物リスト
持物 | 各自 | ベネデッタ | レイナ | タキスキー | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
寝袋又は寝具 | - | 3組 | 2組 | 2組 | 必要なら枕・マット |
食材/夕食用 | - | ○ | - | - | 野菜・魚介類・肉・焼きそば・油・塩・胡椒・マヨネーズ |
食材/朝食用 | - | ○ | - | - | コーヒー・パン・卵・ジュース・果物 |
炭 | - | ○ | - | - | 着火材・火箸・トング・吹き筒・うちわ共 |
鉄板・焼き網 | - | - | - | - | キャンプ場で用意 |
包丁・俎板 | - | ○ | - | - | 笊・バット共 |
電気ポット | - | - | ○ | - | 朝食コーヒー用 |
カセットコンロ | - | ○ | - | - | 朝食&炭焚き付け用/なくともOK |
食器用洗剤 | - | ○ | - | - | スポンジ共 |
タオル・布巾 | - | ○ | - | - | または紙タオル |
食器 | - | - | ○ | - | 皿・コップ・箸 |
飲み物 | - | - | ○ | - | ビール0.5Lx24本・炭酸水1Lx2本・ウーロン茶2Lx2本・麦茶2Lx1本・ワイン2本・水2Lx2本 |
氷 | - | - | ○ | - | |
保冷ボックス | - | ○ | ○ | - | 保冷剤共 |
酒のツマミ | - | - | ○ | - | ナッツなど適宜 |
蚊取り線香 | - | - | - | ○ | 2組 |
ポリ袋・ビニール袋 | - | - | ○ | - | 調理用・運搬用・ゴミ袋用大 |
ヘッドライト | ○ | - | - | - | or自転車用ライト |
石鹸 | ○ | - | - | - | シャワー用 |
その他 | ○ | - | - | - | 虫除け剤、ムヒ |