幕張駅北口
節分の豆まきが終わり暦の上では春になると、そろそろ日本にいる白鳥はシベリアへ帰る準備に入ります。
この週末は天気が良いので、千葉県印西市の本埜(もとの)の『白鳥の郷』と呼ばれるところに白鳥を観に行くことにしました。
浪花橋より花見川上流を望む
その白鳥の郷は印旛沼の近くにあり、印旛沼には花見川と繋がるサイクリングコースがあるので、これを使って南側からアプローチすることにしました。
やってきたのはJR総武線の幕張駅で、お天気は快晴。朝の気温は低いものの、日差しがあるのであまり寒さを感じません。この幕張駅のすぐ東に花見川は流れています。
幕張の花見川サイクリングコース
浪花橋を渡ると花見川の左岸にサイクリングコースが続いています。
この花見川サイクリングコースは南は花見川河口の美浜大橋からさらに稲毛海浜公園まで続き、北は印旛沼自転車道となり長門川の酒直水門まで続きます。
森の中を行く
浪花橋付近は住宅地の横で視界が開けていましたが、しばらく行くと森の中を走るようになります。
この森を抜けると花島橋に出ます。
花島観音辺りを望む
花島橋の西側には花島公園や花島観音といった気持ちのよい空間があるのですが、今日は寄り道せずに左岸をこのまま進みます。
カワセミがいる辺り
かつて花島橋から弁天橋までの左岸は砂利道でしたが、これはしばらく来ないうちに舗装されていました。
またかつてはその砂利道区間でよくカワセミが見られたのですが、今回はどうでしょうか。
弁天橋より花見川上流を望む
路面が良くなったので弁天橋にはあっさり到着。逆に言うと途中で足を止めてカワセミを探すという楽しみが少し減ったかもしれません。舗装のせいではないと思いますが、この日は残念ながらカワセミを発見できず。
弁天橋より北の左岸は土手上を行く砂利道になります。個人的にはこの土手上のコースは嫌いではないのですが、前回ダートに苦しめられたレイナが舗装路がいいと言うので、ここは順当に右岸に渡り舗装路を行きます。
新川となかよし橋
京成本線をくぐり抜けた先で左岸に復帰しました。弁天橋から北の流れは新川という名に変わります。
現在は花見川と新川は繋がった一本の川のように見えますが、かつてこれらは別々の流れでした。江戸時代の利根川東遷によって印旛沼はしばしば氾濫するようになりました。そこで印旛沼の排水を東京湾に流す計画が立てられました。これは江戸時代の半ばから明治時代にかけて三度試みられたそうですが、いずれも失敗に終わりました。
大和田排水機場
昭和時代に入ると戦後新たな設計で放水路が起工され、ついに1968年(昭和43年)に印旛沼の排水を東京湾に流すことに成功したのです。つまりこの時花見川と新川は繋がり一本の流れになったのです。
弁天橋のすぐ北にある大和田排水機場はこの排水システムの中でももっとも重要な施設の一つで、新川の水をポンプアップして花見川に流す役目を負っています。このポンプアップは新川の水位が一定以上にならないと行われません。
村上橋からゆらゆら橋と八千代中央図書館を望む
なぜここに排水機場が必要だったかというと、元々は花見川の川床の方が新川のそれより高く、自然流下させる放水路とするには勾配が足りなかったからです。
なかよし橋の先は工事中だったのでいったん右岸に渡り、東葉高速線をくぐり抜けたところにある村上橋を渡って左岸に復帰しました。村上橋の上流には人道橋のゆらゆら橋が、左岸には八千代広域公園の一角にある八千代中央図書館が見えます。
新川の釣り人
八千代中央図書館のすぐ南にある広場でトイレ休憩したのち、再び新川沿いを北上します。
新川は通常時は西印旛沼と同じ水位であり、まったくといっていいほど流れがありません。そのためここではヘラブナ釣りがとても盛んです。
釣り人が並ぶ新川の畔
鏡のように平らな川面!
道の駅やちよ
新川に糸を垂らす釣り人を眺めながら進むと、トンガリ帽子の『道の駅やちよ』が見えてきます。
左よりサリーナ、レイナ、コムラン
八千代ふるさとステーションの別名があるこの道の駅はいつでも大繁盛で、この時も大勢の人々がやってきて新鮮な農産物などを買い求めていました。
ここはサイクリストの休憩スポットとしても人気で、バイクラックには自転車がずらりと並んでいます。私たちもここでちょっと休憩。サリーナはアイスクリームを、レイナとコムランはホットドックで小腹を満たしました。
逆水付近
一服したらさらに新川を遡ります。もっともこの川には流れがほとんどないため、遡っているのか下っているのか、感覚的にはさっぱりわかりませんが。(笑)
面白いことにこのあたりの地名には『逆水』というところがあり、逆水橋(さかさみずばし)という橋もあります。かつてこのあたりは、大雨などで増水すると流れが逆向きになったそうです。それが地名として残っているのですね。
新川を印旛沼へ向かう
現在の新川は通常はほとんど流れのない川ですが、ごく僅かに印旛沼方面に流れています。しかし増水した際には先ほど通った大和田排水機場から花見川に大量に排水されるので、ここに逆向きの流れが発生します。
新川上流部の野焼き
新川の周囲には田んぼが作られており、今日は風がなくいい天気なので野焼きが行われていました。
そうそう、花見川にはカワセミなどの野鳥がたくさんいるのですが、この新川では何種類かの水鳥が見られます。オオバンたくさんたくさん、ちょっと珍しいカンムリカイツブリも。
阿宗橋から印旛沼方面を望む
花見川と新川を合わせて印旛放水路と呼ばれますが、その上流端がここ阿宗橋です。
つまりこれより先が印旛沼というわけですね。その印旛沼は西印旛沼と北印旛沼の二つに分かれています。
泉福寺付近
自転車道は西印旛沼の南岸を行くのですが、ここでそれを離れ泉福寺に寄ることにしました。
泉福寺
本日始めてとなる坂を上って泉福寺に到着。
このお寺には国の重要文化財に指定されている茅葺き屋根の古い薬師堂があります。
泉福寺薬師堂
室町時代後期の建造で、建築としてはもっともシンプルと言っても良い方三間寄棟造の端正な佇まいです。様式的には和様と禅宗様が取り入れられています。
ここには四国八十八ヶ所巡礼ならぬ小豆島八十八ヶ所巡礼の記念碑があります。なぜ四国ではなく小豆島なのかは不明です。ちなみにこのあたりには印西大師八十八ヵ所霊場というものがあり、泉福寺はその74番札所になっています。
師戸川の谷戸
泉福寺にお参りしたら師戸川の谷戸に下ってどんどこ。
今回は谷戸の下流へ向かいましたが、この谷戸は深く、上流方面へ向かっても楽しめます。
印旛沼公園への上り
谷戸の出口で本日二番目の上りに突入。
この坂道は印旛沼公園へのアプローチ路です。
印旛沼公園展望台から西印旛沼を望む
上った先の印旛沼公園からは西印旛沼がよく見えます。
印旛沼公園は師戸城跡で、凸先のこの展望台はその本丸だったところのようです。
舟戸大橋より見る西印旛沼
印旛沼公園から西印旛沼を眺めたら舟戸大橋を渡ります。
時は12時半。ここまで昼に予定していた食堂2軒に振られてしまい、舟戸大橋の先のうなぎやと食堂もダメで昼食難民に。(笑) 京成臼井駅の近くまで行き、やっと昼食にありつきました。
臼井田
昼飯処から下って臼井田を行き、
佐倉ふるさと広場付近の西印旛沼
西印旛沼の畔の自転車道に入って『佐倉ふるさと広場』へ向かいます。
佐倉ふるさと広場のオランダ風車
佐倉ふるさと広場はオランダ風車があることで有名です。風車の横に見える白い構造物はゴッホも描いたはね橋です。
ここは春にはきれいなチューリップが一面を埋め尽くすのですが、この時はその球根の植え付け作業が行なわれていました。
飯野竜神橋から見たオランダ風車
風車を眺めながら少しまったりしているとコテッチャンから連絡があり、順調に白鳥の郷へ向かっているとのこと。コテッチャンは都合で私たちとは別行動となり、利根川を下って白鳥の郷を目指しているのでした。
ということで重い腰を上げて風車を後にし、飯野竜神橋を渡って西印旛沼の東岸を北上します。飯野竜神橋の袂には遊覧船が泊まっています。
佐倉ふるさと広場から双子公園へ
このあたりはまったくの平坦地で、印旛沼側に草が生えているので湖面はあまり見えません。
双子公園のトイレ
双子公園に到着。ここの見どころはなんと言ってもこのトイレです。いえ、今はそうではなくなりました。
かつてこのトイレにはかのバンクシーのものかと噂された絵が描かれたことがあるのです。それも二度までも。残念ながらこれらは当局によって消されてしまいましたが、ちょっと見たかったですね。まあ、それらが本物のバンクシーであったのかニセモノであったのかどうかはともかく、ただのいたずら書きとして消してしまうというのはね、、、
双子公園のナウマン象像
ここにはナウマン象の像もあります。
この先の印旛捷水路の掘削工事の際にナウマン象の化石が発掘されたことから、それを記念してここにモニュメントが置かれたようです。ここにかつてナウマン象がいたということは、やはり日本はユーラシア大陸と繋がっていたということでしょう。
印旛捷水路
印旛捷水路はここまで走ってきた西印旛沼とこれから向かう北印旛沼を繋ぐ水路で、ここが西印旛沼との接続口です。
ここからは印旛捷水路沿いを北上します。
市井橋
印旛捷水路の西岸には自転車道があるのですが、この時それは通行止めだったので東岸の一般道を行きます。この原因は市井橋の袂の法面崩落で、もう1年以上も通行止めが続いています。
この捷水路の自転車道は渓谷風の景色がきれいだったのでちょっと残念です。
案能橋付近
鶴巻橋あたりまでの渓谷風のところを過ぎると景色は一転し、周囲は穏やかな田んぼになります。
案能橋から印旛捷水路の南西を望む
案能橋を渡って西岸の自転車道に入ります。
大屋根の民家
印旛沼は江戸時代の新田開発で有名ですが、先に述べたように東京湾への排水に失敗し、うまくいかなかったようです。しかし現在はこの周囲は立派な米作地帯になっています。
印旛捷水路の北印旛沼接続部
京成成田空港線と北千葉道路をくぐり抜けるとほどなく、北印旛沼が見えてきます。
北印旛沼
北印旛沼は西印旛沼に比べ奥行きが深いので広く見えます。
その湖面の向こう側にうっすらと双耳峰の筑波山。
筑波山
広い関東平野の中にぽつんとこの山だけが鎮座しているように見えます。
北印旛沼の畔に立つ面々
北印旛沼と筑波山を眺める面々。
北印旛沼の畔を行く自転車道
ペリカンがいる船着場
北印旛沼の南岸を廻り西岸に差し掛かろうという時、小舟が溜まっているところがありました。
そこを良く見ると大きな鳥の置物があります。ペリカンの置物? と思ったら、その置物がゆっくりと動くではないですか。
なんとこの置物は本物だったのです。いや違った、これは本物のペリカンでした。少しピンク色をしているのでモモイロペリカンでしょうか。
ペリカン
なんとこのペリカンには名前があり、カンタくんと言うそうです。
こんなところにペリカンがいるはずないよね〜 あのおじさんがペットとして飼っているいるのかな〜 などと話をしていたのですが、どうもそうではなく30年近く前のある日突然、ここにやってきたようなのです。野生のものが迷い込んだのか、飼育されていたものが逃げ出したのかのは分からないそうです。この時は付近が工事中でカンタくんに近づけなかったのが残念でした。
漁師と小舟
ここはカンタくんのところとは別の舟溜まり。漁師さんが棹で小舟を操っています。
こうした風景が長く残ってくれるといいですね。
漁師と小舟その2
気に入った景色なのでもう一枚。
田んぼの中を行く
上の舟溜まりで北印旛沼を離れ、いよいよ白鳥の郷に向かいます。
何もない田んぼ
周囲は広大な田んぼですが、この時期は土がならされているだけでそこには何もありません。この景色を見たレイナは、『この畑は何を作るんでしょうか?』
そうですね、確かに水が入っていないと田んぼと畑は見分けが付きにくいですね。
一枚だけ水が入った田んぼ
そんな景色の中に一枚だけ水が入った田んぼがあります。近くの農道には車がずらりと停車してあります。
ここが本日の目的地の本埜の白鳥の郷です。
白鳥の郷
餌やり
自転車を置いて田んぼに近づいてみると、わ〜、たくさんいるね〜 しかもこんなに近くで見られるなんて!
ここですでにやって来ていたコテッチャンと無事合流。そのコテッチャンによれば、先ほどここで餌やりが行なわれたとのこと。おじさんがバケツに入った餌を白鳥と鴨に与えています。
白鳥は首を水に突っ込み、オナガガモは逆立ちして餌を漁っています。
白鳥と鴨
ここにいるのは白鳥と鴨ですが、不思議なことに鴨はオナガガモ一種類です。マガモやカルガモが一羽もいないのはなぜでしょう。
白鳥は多くがコハクチョウですが、中にはオオハクチョウも少し混じっているようです。コハクチョウとオオハクチョウの見分け方は大きさと嘴の違いで、オオハクチョウの方が一回り大きく、嘴の黄色い部分が多いです。
幼鳥
白鳥はその名のとおりに真っ白ですが、中には灰色っぽい個体が見えます。この灰色っぽいのは幼鳥で、徐々に白色が多くなり 2-3 年で成鳥になります。
左には数羽で喧嘩をしているらしきものがいます。TOP写真は羽ばたきで、シベリアへ帰る準備でしょうか。白鳥が鳴く声はあまり聴いたことがありませんでしたが、ここでは吠えるようなもの凄い声やラッパを吹いているような声など、いくつかの種類の鳴き声が聴けました。
白鳥の飛来
野生の白鳥がいる場所は大きくは寝場所と餌場の二種類に分けられます。寝場所から早朝に飛び立って昼間は餌場で過ごし、夕方に寝場所に戻るのです。
この白鳥の郷では餌付けされているので餌場とも言えますが基本的には寝場所で、朝と夕方に多くの飛翔が見られます。早朝の飛翔は日の出から2時間ほどで、夕方の帰還は16時頃からのようです。私たちがここに着いたのはちょうど16時頃で、帰還が始まったところです。
白鳥の旋回
白鳥は数羽から十羽ほどの単位で移動するようで、この時はまず3羽が帰還してきました。
ゆっくりと大空を旋回し、
白鳥の旋回その2
速度を落として、
白鳥の着水
バタバタっと着水します。
続いて6羽が飛来。
白鳥の着水その2
大型の鳥なので迫力がありますが、ちょっと不器用なふうにも見えます。
しかし、あれ〜アタシあんたにぶつかっちゃうよ〜 とはならないから不思議です。
白鳥の着水その3
日没が近くなるにつれ、この帰還は多くなります。この日は最後に十数羽が帰ってきました。
着水した白鳥たち
白鳥が空を舞う姿を眺めているのは楽しいのですが、陽が地平線に近づくにつれて徐々に寒くなってきました。
白鳥の郷の面々
この企画は先週末の予定でしたがその時は雪予報で一週間ずらしたのですが、これは正解でした。この日は晴れで風もなく穏やか。これで日差しがなければ白鳥をゆっくり眺めることはむずかしかったろうと思います。
左端のコムランは薄着で寒そう。右端のコテッチャンはサイドファスナーが開いているのに気付かず、これも寒そう。ということでぼちぼち引き上げるとしましょう。
白鳥の郷を後に
水平線に向かって落ちて行く太陽を眺めながら、JR成田線の小林駅へ向かいます。
暦の上では春になりましたが気温はまだ低く、条件がよほど整わない限りまだ本格的なサイクリングは厳しい季節です。この日はポカポカ陽気で白鳥を観に行くには最高の天気で、1日のんびりとても快適に走れました。