恒例の房総の水仙企画。今年は保田見林道(ぼてみりんどう)、をくづれ水仙郷、大山の千枚田の三点セットで、内房線の上総湊駅を起点とした周回コースです。
ここは上総湊海浜公園に駐車場があるので車の利用が便利ですが、この日の参加者は全員、電車でのアプローチでした。な〜んだ。(笑)
この日はお天気が心配でしたが雨はなくなり、朝方は気持ちのよい晴れ。
まずは富士山を眺めようと海岸に行ってみました。
青い空と碧い浦賀水道! 先は三浦半島。いつもならその上に富士のお山が見えるのですが、この日は地平線近くに雲が出ていて残念ながらその姿はありませんでした。
本日の参加者は左より、ビジターのブンちゃんと背中のマッキー、そしてジオポタ3人娘のレイナ、サリーナ、ミルミル。カメラはサイダー。
ブンちゃんとレイナはハリークイン、ミルミルはヴェルモのペガサスというEバイクなので、今日はこれらのEバイクがダートと上り坂をどれくらい走れるかのテスト走行でもあります。
海岸線を南へ行くと漁船溜まりとなっている上総湊港です。
この港は湊川の河口にあります。
漁船の横をかすめて進み、JR内房線の鉄橋をくぐって湊川沿いを行きます。
この湊川は今日のコースの最後にも出てきますので、覚えておいてください。
東関東自動車道の手前で湊川に相川が流れ込んでいます。ここからは湊川を離れへ相川沿いを行きます。
相川沿いに入ると道は上りになり、さっそくEバイクの面々はその恩恵に浴します。しかしブンちゃんが遅れていますね。どうしたのかな。ブンちゃんは今日1日バッテリーが持つかどうかぎりぎりそうなので、序盤はアシストを受けずに走っているんだそうです。なるほど。
谷という集落に入りました。この集落にはちょっとレトロな建物が並んでいます。
谷の集落が終わるあたりに『岩見堂やぐら』があります。
『やぐら』とはwikipediaによると、鎌倉あたりに多く見られる中世につくられた横穴式の納骨窟または供養堂で、数は少ないものの東京湾を隔てたこの辺りにもあると書かれています。
このやぐらには滅多に人が訪れないようで、アプローチの石の階段は苔むしています。
この石段の横にはきれいな日本水仙が咲いていました。
このあたりは江戸時代より水仙の産地で、すでに安政年間(1854-1860年)には船で江戸に出荷していたそうです。
水仙を眺めながら滑る階段に注意して登って行くと、こんなところに出ます。
おそらくこの山は全体が岩でできており、ここはその一部が露出しているのだと思います。
珍しい造りに興味津々でやぐらの中を覗き込むブンちゃん。
近所の方が教えてくれたところによると、このやぐらの内部には横の扉から入れるとのことなので入ってみました。
内部は壁はもちろん天井も岩でできており、漆喰が塗られた跡があります。左の壁には4基の五輪塔が浮彫りにされ、正面には石仏がたくさん並んでいます。
これらの石仏の中には寛文年間(1861-1872年)の地蔵菩薩もあるため、江戸時代前期の建造と考えられています。
岩見堂やぐらを覗いたらさらに相川沿いを南下します。
梨沢の梨沢橋で相川を渡ると、いよいよ保田見林道に入ります。梨沢橋の先で道は三手に分かれるのですが、保田見林道は一番右側の道です。ここを走るのは久しぶりなので、間違って真ん中の道に入ってしまいました。民家が出てきたところでそこの住人の方が注意してくれて気が付きました。戻ってやり直し。ちなみにこちらの梨沢側には林道の表示はありません。
ここからは道の勾配が上昇し、ブンちゃんのEバイクもアシストモードに。
梨沢橋から数百m進むと周囲から人家が去り、路面は簡易舗装になります。この舗装は施工からかなり年月が経っており、その後あまりメンテナンスされていないようで、あちこちが剥がれて穴ぼこが空いています。そんな道を悪戦苦闘しつつ、ゆっくり上って行きます。
梨沢橋から2kmほど進んで、みんなに押しが入ってきたころ、この林道の見どころの一つの素掘りのトンネルが現れます。
周囲はしんと静まり返った山の中で、その岩場にぽっかりと暗い穴が空いています。ちょっと恐ろしいような雰囲気です。
地面は濡れており、トンネル内には照明がなく真っ暗なので、自転車を押して慎重に進んで行きます。
この暗闇トンネルを抜けると、その先の道は左側が落ち込んだ谷。
道幅が狭いのでうっかり落っこちないようにね。
ほどなく先ほどと同じようなトンネルが出てきます。これは先ほどのものより短く、路面も濡れていないので走って抜けます。
そしてもう一つ、合計三つのトンネルを通り抜けます。
すると今度は右手から岩山が迫り、左手は崖に。
これが房総だ〜!
この日の気温は数日前までの予報では雪になるかもしれないというものでしたが、これは直前になって弱まりました。しかし道の水溜まりには氷が張っていました。
お〜寒い〜〜
ここからは、馬力があるヴェルモのペガサスに乗るミルミルがみんなを引っ張ります。
トンネルを抜けると下りという道は多いですが、この保田見林道は違います。三つのトンネルをくぐり抜けてもさらに上りが続きます。
このあたりはきつい上りの上に砂利道となり、さらに路面の凸凹があちこちにあり、時々押しになります。砂利道や凸凹が大きい道では速度が落ちトルクも落ちるので、Eバイクのアシスト力もそれに比例して落ちてしまうようです。
南進していた道がいつの間にか東へ向かい出すと、またすぐ進路を北にとります。するとその先のカーブでどうやらピークを迎えたようで、道の勾配は久しぶりにフラットに。
この道端にたくさん実をつけた夏みかんがあったので一つ頂戴しました。すっぱいけれどおいしかった〜
夏みかんで一服したらさらに先へ進んで行くのですが、ここから下りかと思いきや、ちょっと下ってまた上り。
え〜、また上るんですかぁ〜(怒) のレイナでした。
この上り口からは小さな集落が見えました。こんな山奥に民家があるなんてちょっとびっくりですが、あれが保田見の集落です。
そしてこれがその後の上りの図。
ここは全員押し。 う=っ!
よれよれ〜っと、なんとか第二ピークに辿り着きました。文句ブーたれのレイナもここまでみんなに遅れをとることなく到着しましたが、ちょっとお疲れモードでしょうか。
この第二ピークではレイナとブンちゃんがそれぞれの愛車のハリークインとともにツーショット。
保田見林道にはあまり眺望がありませんが、このあたりから僅かにですが低い山が連続する房総の山並みが見え出します。
第二ピークからはまたもや下って上りに。この林道はアップダウンの連続でなかなか真のピークが現れません。
しかしようやく最後のピークに到達。あ〜疲れた〜〜
この最後のピークからダーッと下ると、もみじロードの愛称があるr182に出ます。
『道にでた〜っ』 とは我らがミルミル。あのう、ここまでも一応道なんですがね。(笑)
r182の脇は志駒川で、このあたりは志駒渓谷と呼ばれる渓流が流れます。
もみじロードの山中トンネルをくぐり抜けるとすぐに道は房総半島を東西に横切る長狭街道r34に入ります。長狭街道は東へ向かい横根峠を目指します。
保田見林道でかなり疲れてしまったレイナは、『え〜、また上りですか〜 ここの最寄りの駅はどこですか。あたし、もうダメです〜』 とちょっと弱気になります。
長狭街道のピークである横根峠はすぐにやってきました。この横根峠までは富津市でこれより鋸南町になります。
ちょうど横根峠に蕎麦屋があったので、そこに腰を落ち着けました。ここはガッツリと天ざるそばを。
天ぷらでエネルギーを補充したレイナは昼食後も行けるところまで行ってみるということになりました。人もEバイクもエネルギーが大事ですね。
蕎麦屋でひと呼吸ついたら鋸南町に入ります。鋸南町は特に水仙で有名なところで、古くはこのあたりの水仙は元名水仙と呼ばれ、江戸で人気が高かったようです。
長狭街道を離れ佐久間ダム方面へ向かうとほどなく、林道金銅線が分岐します。ここの土手には水仙がいっぱい。
近づいてみると、ほのかな良い香りがします。ジャスミンのようなあるいはロウバイのような明るく透明感のある香り。
短いトンネルをくぐり抜けると、をくづれ水仙郷の入口に到着します。
道端に連なる水仙の向こうに、低い山並みが連なります。これぞ房総という景色です。
ここから水仙郷の中核部へ進んで行きます。
道は穏やかながらも上りに。
南には房総半島にしては珍しくもきれいな三角形の山が見えています。ん〜、あれはなんて言う山でしょうか。
道の両側に咲く水仙を眺めながら進んで公民館の前を通り過ぎ、八雲神社の前までやってきました。
このあたりがをくづれ水仙郷の中心部と言って良いところでしょう。
この水仙にほぼほぼ満足げなジオポタ4人娘。
八雲神社にお詣りしたのち、さらにをくづれ水仙郷の奥へ向かいます。
ミルミルは元々かなりパワフルなのですが、さらにペガサスというEバイクを得てもう怖いものなし。がっしがっしと上って行きます。
一方のブンちゃんは愛犬マッキーの質量がのしかかって来るので人一倍大変です。
そしてダートと上り坂が多いこのコースはバッテリーの消耗が激しいので、その減り具合にも注意しなければなりません。ブンちゃんは保田見林道を出てからはあまりアシストを使っていないようです。
とは言え、をくづれ水仙郷は奥へ行くに従って道の勾配がきつくなります。
む〜ん、もうパワースイッチON ! と、ここからはアシストモードのブンちゃんでした。
をくづれ水仙郷の『をくづれ』は大崩と書き、古くから崖崩れが多い傾斜地だったようです。現在もここは斜面地で、畑も段々畑状のところが多いです。
その向こうには名もなき小山が連なりますが、その中に一つだけ人骨山(ひとぼねやま)という名をつけられた山があります。伝説によればこの山には鬼が棲んでいて、毎年節分には村の娘を生け贄に連れて来させたそうです。その後鬼は退治されますが、生け贄となった娘たちは戻ってこず、それを哀れんで今でもこの集落の人々は節分には豆まきをしないそうです。
その人骨山のあたりには早くもこんな桜が咲いていました。
八雲神社から2km少々進むと、道の勾配がぐんと上昇。
保田見林道でほぼほぼエネルギーを使い果たしたレイナはここで押しに。しかしこの激坂は長くはありません。
最後は自転車を押し上げるのもきついくらいの坂ですが、なんとかこれを登ると視界がぱっと開きます。
向こう側は法名という集落で、彼方には低い山並みがどこまでも連なっているのが見えます。これぞ房総!
この小さなピークを境にこの先は鴨川市になります。
ちょっとだけ眺めを楽しんだら法名へ下ります。
この写真の一番上に見えるガードレールが先ほどの小さなピークで、その下には棚田が広がっています。
この時期は田んぼには何もありませんが、畔の土手には水仙が咲いています。
法名からは加茂川沿いのr88に下るのですが、このルートは二つあり、今日は難易度が低い南コースを行くつもりにしていたのですが、うっかりアップダウンが多い北コースに入ってしまいました。戻ってやり直し。
南コースはアップダウンがなくずっと下りで、途中に西畑と石畑という集落があります。
下に石畑の集落、この写真の右奥がこれから向かう大山です。
石畑の先でr88に出たら、その先の新井でカントリーロードに入ります。
ここは緩い勾配の棚田が続き、その中に快適な道が続いています。
しかし道は穏やかながらも上り。ミルミルはここでバッテリーをチェンジ。ここまでの走行距離は25kmほどでメーカーが公表している走行可能距離の30-50km以下ですが、これはやはり保田見林道のダートと上りの影響が大きいのでしょう。
今日は50km以上走らなければならないので、最後までバッテリーが持つかどうかちょっと心配になるミルミルでした。
しばらく田んぼの中を上り続けて行くと大山不動のあたりで広い道に出、ほどなく大山の千枚田に到着します。
千枚田とは言うものの実際の区画数は375枚で、棚田の規模としてはそれほど大きなものではありません。
しかしこの田んぼは驚くことに天水だけで作られているそうで、そうした田んぼは日本ではここだけだそうです。
千枚田のピクニックテーブルで一休みしたら記念の撮影を。
左からブンちゃんとマッキー、ミルミル、レイナ、サリーナ、そしてサイダー。
大山の千枚田からは長狭街道へ下ります。このあたりはどこもかしこも棚田だらけです。
そんな中で野焼きをしているところがありました。野焼きは一昔前はどこでも見られましたが、現在は環境問題などで禁止している自治体も多いと思います。このあたりはまだそうはなっていないようですね。環境問題を突きつけられると野焼きを安易に肯定することはできませんが、白い煙が立ち上るこうした景色は生活に根付いた感があり、なんともいい感じです。
金束(こづか)の交差に出たらr88に入り戸面原(とづらはら)ダム湖方面へ向かいます。ここはしばらく上り。
『この上りはどれくらい続くんですか〜 あたしのバイクのバッテリーはウルトラマンのカラータイマー状態なんですが〜』 と、ここに来てガックンとバッテリーが激減したブンちゃん。
『ん〜ん、あと2kmくらいかな。本当はこのあと林道を行くつもりだったんですが、これはまたの機会にしましょう。』 と、サイダー。
ブンちゃんのバッテリーの消耗もありますが、ここまで予定よりずいぶん遅れてしまったので、このあと予定していた大山林道と松節林道はやめてまっすぐr88を行くことにしました。
えっこらよっこらと上り詰めてなんとかr88のピークに達すると、そこは鴨川市と富津市との境です。富津市→鋸南町→鴨川市と巡って再び富津市に戻ってきました。
ブンちゃんのバッテリーもこのピークまではなんとか持ちこたえてくれました。そしてここからは長いダウンヒルです。
戸面原ダム湖を横目に見ながらグワ〜ンと気持ちよく関まで下ってきました。
このあたりの湊川には『犬岩』という面白い形をした岩があるのですが、今日は残念ながらそこには時間の関係で行けません。
しかしr88のすぐ脇にちょっと面白いところがあるので寄ってみることにします。
それは湊川に架かる楠鐘橋の脇で、r88から見るとこのような岩が露出しています。
その岩の下に開いているのは小畑という集落への入口となる素掘りのトンネルです。
小畑に行くにはこのトンネルを通り抜ける以外に手段がありません。行き止まりの集落というのは世の中になくはありませんが、入口がこんな狭いトンネルだけというのはそうそうないように思います。
この事実を知った時は私は少なからずびっくりしました。
これはトンネルをくぐり抜けたところから見た湊川の流れです。
このペイジの冒頭で河口の湊川を紹介しましたが、ここはそこから10kmほどしか離れていませんが、様子は丸で異なります。このあたりの川の多くがそうであるように湊川もまた、くねくねと頻繁に曲がりくねって流れています。
そして小畑へ向かう道がまた凄いのです。素掘りのトンネルから湊川に沿って続く道は左は湊川に落ち込む谷で、右側からはr88から見えた岩山が迫ってきています。しかもその岩山が道上にせり出してきていて、今にも落っこちてきそです。
こんなところを通って集落に出入りするとは、なんと恐ろしい!
さて、以上で本日のイベントは終了。ここからはカントリーロードに入り出発地の上総湊に向かいます。
山がちだった景色に変化があり、周囲に田んぼが広がるようになります。
『これでもう上りはないですよね〜 あとは海岸まで下るだけですもんね〜』 と、なんとかここまで踏ん張ったレイナ。 でもそう甘くもないんだよねぇ。(笑)
今日は空が白かったのが少し残念でしたが、水仙は満開でちょうどよかったです。保田見林道はEバイクとは言え試練かなと思ったのですが、案の定みなさんかなりきつかったようです。上りであることより砂利道や路面の激しい凹凸がEバイクのアシストをキャンセルするようです。それでもなんとか全員完走できてよかたです。でもレイナはもう房総には来ないと申しております。(笑)